遺産分割調停で聞かれることは? 調停の流れや有利に進めるポイント

2024年10月07日
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遺産分割調停で聞かれることは? 調停の流れや有利に進めるポイント

2023年の愛知県岡崎市の死亡者数は3572名でした。被相続人が亡くなると相続が開始されますが、話し合いがうまくいかず「遺産分割調停」を利用するケースも少なくありません。

遺産分割調停では、調停委員からさまざまな質問を受けるため、主張や希望が調停委員へ正しく伝わるように、弁護士と協力して準備を整えるのが得策です。

本記事では、遺産分割調停で聞かれること、手続きの流れ、調停を有利に進めるためのポイントなどをベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスの弁護士が解説します。

出典:「岡崎市統計ポータルサイト 2-4異動要因別人口異動数等(年別)」(岡崎市)


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1、遺産分割調停とは

「遺産分割調停」とは、家庭裁判所において相続人全員が遺産分割の方法を話し合い、合意を目指す手続きです

遺産分割調停では、民間の有識者から選任される調停委員が、相続人間の話し合いを仲介します。

相続人同士が直接話し合っても解決できなかった問題を、中立的な立場にある調停委員のサポートによって冷静に話し合うことができ、円満な解決につながるケースがあります。

2、遺産分割調停で聞かれること

遺産分割調停では、調停委員が相続人に対してさまざまな質問を行い、その回答を基に合意の道を模索します。

具体的には、以下のような内容を調停委員から聞かれることが多いです。



  1. (1)調停申立てに至った経緯

    調停成立の可能性を模索するための前提知識として、調停委員は相続人が調停申立てに至った経緯を知りたいと考えています。

    一例として、以下の事項などを回答できるように準備しておきましょう。

    • 相続発生前の家族関係
    • 相続人間における遺産分割協議の進捗状況
    • 相続人間でもめているポイントは何か
    など
  2. (2)相続財産の内容

    相続財産の内容については、遺産目録にまとめた上で、各遺産に関連する資料とともに家庭裁判所へ提出するのが一般的です。

    遺産分割調停の場では、遺産の内容について調停委員から補足説明を求められることがあります。特に不動産については、立地・価値・管理使用状況などについて質問されることがあるので、説明できるようにしておきましょう。

  3. (3)相続を希望する遺産

    調停委員は、各相続人から相続に関する希望を聴き取り、適切な解決策を見つけ出そうとします。

    特に相続したい遺産がある場合は、調停委員に対してその内容・種類および理由などをきちんと伝えましょう。

  4. (4)分割方法を決めるに当たって考慮してほしい事情

    各相続人には原則として、法定相続分に応じて遺産を相続する権利があります。

    ただし法定相続分は、「特別受益」や「寄与分」を考慮して修正されることがあります

    • 特別受益:被相続人から相続人が受けた遺贈、または婚姻・養子縁組のための、もしくは生計の資本としての贈与
    • 寄与分:特定の相続人が被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした場合の貢献度合い


    特別受益や寄与分を考慮し、修正した後の相続分は「具体的相続分」と呼ばれます。

    遺産分割の方法を決めるに当たり、特別受益や寄与分を考慮してほしい場合は、その事情を調停委員に対して伝えましょう。

3、遺産分割調停の手続きの流れ

遺産分割調停の手続きは、大まかに以下の流れで進行します。



  1. (1)家庭裁判所に対する調停申立て

    遺産分割調停は、相続人・包括受遺者・相続分譲受人(=以上を相続人等といいます。)のいずれかが、家庭裁判所に対して申立てを行うことによって開始します。

    申立先は、申立人以外の相続人等のうちいずれか1人の住所地の家庭裁判所、またはすべての相続人等が合意で定める家庭裁判所です。

    申立てに必要な費用や書類などについては、裁判所ウェブサイトをご参照ください。
    参考:「遺産分割調停」(裁判所)

  2. (2)調停期日の通知・証拠書類等の提出

    調停申立てを受理した家庭裁判所は、相続人等に対して調停期日を通知し、主張書面や遺産分割に関する証拠書類の提出を求めます。

    各相続人等は、家庭裁判所が指定する期限までに、主張書面や証拠書類を準備して提出し、調停期日に備えます。

  3. (3)調停期日

    調停期日は、家庭裁判所の調停室において行われます。1回の期日は、1時間から2時間程度です。

    各相続人等は個別に調停室へ呼び出されて、それぞれ調停委員と話をします。前述の質問事項を参考に、調停委員に対して遺産分割に関する事情を分かりやすく伝えましょう。

    調停期日において、調停委員から遺産分割に関する提案を受けることもあります。調停委員の提案を受けたら、ご自身の権利内容等に照らして、それを受け入れるかどうか適切に判断しましょう。

    なお、調停期日には弁護士を代理人として伴うことも可能です。弁護士を同伴すれば、調停委員に対して理路整然と主張を伝えてもらうことができます。また、調停期日の前に、弁護士から主張や希望を記載した書面を出してもらうこともできます。

  4. (4)調停成立の場合|調停調書の作成

    調停期日を通じて、相続人等の間で遺産分割の合意が調ったら、遺産分割調停は成立です。
    調停成立の場合、合意内容をまとめた調停調書が作成され、その内容のとおりに遺産分割を行うことになります。

  5. (5)調停不成立の場合|審判手続きに移行

    相続人等の間で遺産分割について合意することが困難な場合、遺産分割調停は不成立となります。

    調停が不成立となった場合は、家庭裁判所が遺産分割審判を行い、遺産分割に関する結論を示します。調停期日において提出された資料や主張書面、審判への移行後に提出された資料や主張書面を踏まえ、原則として法定相続分を基準として遺産分割の内容が決定されます。

4、遺産分割調停を有利に進めるためのポイント

遺産分割調停を有利に進めるためには、以下のポイントを意識して対応しましょう。



  1. (1)調停期日を欠席しない

    調停期日を欠席すると、調停委員に対して遺産分割に関する希望を伝えることができません。最終的に家庭裁判所が審判を行う際にも、調停期日に欠席したことは不利益に考慮される可能性があります。

    そのため、調停期日は無断で欠席せず、必ず出席しましょう。家庭裁判所に指定された期日の都合が悪い場合は、期日変更を申し立てることもできます。

  2. (2)事実関係を整理して調停委員に伝える|嘘はつかない

    遺産分割に関する事実関係は、事前に整理した上で調停委員に分かりやすく伝えましょう。

    その際、嘘をつくことは厳禁です。調停委員は他の相続人等とも話をするので、嘘をついても簡単に分かってしまいます。ご自身にとって都合が悪い事柄でも、調停委員から聞かれたら正直に答えましょう。

  3. (3)法的根拠に基づいた主張をする

    法定相続分・特別受益・寄与分など、遺産分割に関する法律上のルールに沿った主張を行うと、調停委員に受け入れてもらいやすいです。
    弁護士と相談しながら、遺産分割調停においてどのような主張を行うかをよく検討しましょう。

  4. (4)自分にとって有利な証拠資料を提出する

    遺産分割調停において争点になりやすいポイントは、不動産や高価な動産の評価額・特別受益・寄与分などです。

    これらのポイントについて、ご自身の主張を補強する証拠資料を提出すると、遺産分割調停を有利に進めることができます。弁護士と協力しながら、提出する証拠資料を準備しましょう

  5. (5)他の相続人の主張も聞いた上で、適切な落としどころを探る

    遺産分割調停をまとめるためには、他の相続人等の主張にも耳を傾けなければなりません。
    ご自身の優先順位を踏まえつつ、譲歩できる部分は譲歩して、適切な落としどころを探りましょう。

5、遺産分割調停のサポートは弁護士にご依頼を

遺産分割調停へ臨むに当たっては、弁護士のサポートを受けるのが安心です。

弁護士に依頼すれば、主張書面の作成を代行してもらえるほか、家庭裁判所に提出する証拠資料の収集方法などについてもアドバイスを受けられます。また、調停委員に聞かれそうな質問を事前に予測した上で、どのように答えるか事前に対策を立てることも可能です。

遺産分割調停のサポートは、弁護士にご依頼ください

6、まとめ

遺産分割調停では、調停委員からさまざまな質問を受けることになります。

具体的には、調停申立てに至るまでの経緯、遺産の内容、遺産分割に関する希望などを聞かれます。弁護士に相談しながら、適切に答えられるように準備しておきましょう。

ベリーベスト法律事務所は、遺産相続に関するご相談を随時受け付けております。遺産分割調停の申立てを検討中の方や、他の相続人から遺産分割調停を申し立てられた方は、ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスにご相談ください。

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