金属窃盗の関与で問われる罪は? 盗品買い取りで逮捕された後の対応
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金属類の盗難事件、いわゆる「金属窃盗」が全国的に多発しています。
金属窃盗は窃盗罪として処罰されますが、盗品と知りながら買い取りをした場合も「盗品等有償処分あっせん罪」に問われる可能性もあるため注意が必要です。
今回は、金属窃盗の関与で問われる罪や盗品買い取りで逮捕された後の流れについて、ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスの弁護士が解説します。


1、金属窃盗とは? 問われる罪と刑罰
金属窃盗とはどのような行為なのでしょうか。以下では、金属窃盗の概要と金属窃盗に関与した場合に問われ得る罪について説明します。
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(1)金属窃盗とは?
金属窃盗とは、金属製品や金属素材を盗む犯罪行為を指す言葉です。
近年、金属類の取引価格が高騰しており、以下のような金属類を対象として買取業者への売却目的で行われる金属窃盗が増えてきています。
- 銅線(ケーブル)
- グレーチング(用水路の蓋など)
- 金属板
- 水道の蛇口
このような行為は、「窃盗罪」(刑法235条)に該当します。
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(2)金属窃盗に関与した場合に成立し得る犯罪
金属窃盗をした本人は、窃盗罪に問われることになりますが、窃盗行為に直接関与していない人であっても以下のような罪に問われる可能性があります。
- ① 盗品等有償譲受罪
盗品であることを知りながら金属の買い取りをすると盗品等有償譲受罪が成立します(刑法256条2項)。
※盗品等有償譲受罪の成立要件や罰則などの詳細は2章で解説 - ② 盗品等保管罪
盗品であることを知りながら委託を受けて盗まれた金属の保管をすると盗品等保管罪が成立します(刑法256条2項)。盗品等保管罪が成立すると10年以下の懲役および50万円以下の罰金に処せられます。
なお、保管の約束をしただけで実際に保管しなかった場合は成立しません。また、盗品であることの認識が必要ですので、盗品とは知らずに保管した場合も成立しません。 - ③ 盗品等有償処分あっせん罪
盗品であることを知りながら盗品の売買などの処分を仲介すると盗品等有償処分あっせん罪が成立します(刑法256条2項)。盗品等有償処分あっせん罪が成立すると10年以下の懲役および50万円以下の罰金に処せられます。
なお、実際に盗品の売買が成立しなくても、仲介をした時点で盗品等有償処分あっせん罪が成立します。盗品等の処分が有償であることが成立要件になっていますが、仲介自体は有償・無償を問いません。
- ① 盗品等有償譲受罪
2、盗品と知って金属を買い取った場合に問われる罪と刑罰
盗品と知って金属を買い取った場合、盗品等有償譲受罪に問われる可能性があります。
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(1)盗品等有償譲受罪の定義と成立要件
盗品等有償譲受罪とは、盗品であることを知りながら有償でそれを譲り受けた場合に成立する犯罪です(刑法256条2項)。
盗品等有償譲受罪は、以下の要件を満たした場合に成立します。
① 対象物が「盗品等」であること
「盗品等」とは、盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物と定義されています。
具体的には、以下のような犯罪により取得されたものを指します。
- 窃盗
- 強盗
- 詐欺
- 恐喝
- 横領
- 遺失物等横領
盗品だけではなく、詐欺で騙し取った物や拾ったものなども含まれるのがポイントです。
② 有償で譲り受けること
有償で譲り受けるとは、対価を支払って取得することをいいます。
現実に物の引き渡しを受けることが要件になりますので、約束や契約をしただけでは盗品等有償譲受罪は成立しません。他方、盗品等の引き渡しを受けていれば、代金の支払いが未了であったとしても犯罪の成立が妨げられることはありません。
③ 盗品等であることを知っていたこと
盗品等有償譲受罪は、盗品等であることを知っていなければ成立しません。
盗品等であることの認識は、盗品等の引き渡しを受けた時点で必要になりますので、契約時には盗品等だと知らなくても引き渡し時に盗品等であることの認識があれば盗品等有償譲受罪は成立します。
他方、盗品等の引き渡し時に盗品等の認識がなく、その後に盗品等であることを知ったとしても盗品等有償譲受罪は成立しません。
なお、確実に盗品等だと知っていた場合だけでなく、盗品かもしれないと思いながらあえて受け取ったという場合も盗品等の認識が認められます。 -
(2)盗品等有償譲受罪の罰則
盗品等有償譲受罪の罰則は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
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(3)盗品等有償譲受罪が問題になった事例
令和7年4月8日、茨城県警は某会社役員を、盗品の金属ケーブルを買い取った疑いで逮捕しました。
この事件は、金属ケーブルなどを盗んだ男が先に逮捕されたことをきっかけに発覚しました。捜査の結果、盗まれた金属ケーブルの売却先として金属買い取り会社が浮上し、その役員が盗品等有償譲受罪及び組織犯罪処罰法違反(犯罪収益収受)の疑いで逮捕されました。
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3、逮捕された場合の流れとリスク
以下では、金属窃盗に関与した罪で逮捕された場合の流れとリスクについて説明します。
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(1)金属窃盗に関与した罪で逮捕されたときの流れ
金属窃盗に関与した罪で逮捕されると以下のような流れで刑事手続きが進んでいきます。
- ① 逮捕・取り調べ
金属窃盗に関与した罪で逮捕されると警察署に連行され、警察官による取り調べを受けることになります。取り調べで供述した内容は供述調書にまとめられて後日の裁判の証拠になる可能性がありますので、不利な供述をしないよう注意が必要です。 - ② 検察官送致
逮捕された被疑者は、逮捕から48時間以内に検察官に身柄が送致されます。検察官は、被疑者に対する取り調べを行い、身柄拘束を継続するかどうかを検討します。
引き続き身柄拘束をする必要があると判断した場合、検察官は、送致から24時間以内かつ逮捕から72時間以内に裁判官に勾留請求を行います。 - ③ 勾留・勾留延長
裁判官は、被疑者に対する勾留質問を行った上で勾留を許可するかどうかの判断をします。
勾留が許可されると原則として10日間、勾留延長が許可されるとさらに最長10日間の身柄拘束となります。 - ④ 起訴または不起訴の決定
検察官は、勾留期間が満了するまでの間に起訴・不起訴の決定を行います。起訴されればほとんどの事件が有罪になり前科がついてしまいますが、不起訴になれば前科がつくことはありません。
- ① 逮捕・取り調べ
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(2)金属窃盗に関与した罪で逮捕されたときのリスク
金属窃盗に関与した罪で逮捕されてしまうと、以下のようなリスクが生じます。
- ① 前科がつくリスク
金属窃盗に関与した罪で有罪となると、前科がつきます。
罰金刑や執行猶予付き判決であれば判決後も通常の社会生活を送れますが、実刑判決になると刑務所に収監されてしまいますので通常の社会生活を送るのは困難です。 - ② 会社・社会的信用への影響
金属買い取り会社が金属窃盗に関与してしまうと、会社としての社会的信用が大きく失墜してしまいます。悪評が広がり顧客離れや取引先からの契約打ち切りなどがあると会社の経営にも大きな影響が生じてしまうでしょう。 - ③ 実名報道される可能性
金属窃盗に関与した罪で逮捕されると実名報道されてしまうリスクもあります。
ネットニュースなどに掲載されると半永久的にその情報が残ってしまいますので、今後の就職や結婚などの際に不利益が生じる可能性があります。
- ① 前科がつくリスク
4、金属窃盗の関与で逮捕された場合の対応と弁護士に相談すべき理由
金属窃盗の関与で逮捕されてしまったときは、以下のような理由から早期に弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)逮捕・勾留からの早期釈放を実現できる可能性がある
金属窃盗の関与で逮捕・勾留されてしまうと最長で23日間もの身柄拘束を受けることになります。長期間の身柄拘束は日常生活への影響はもちろん、肉体的・精神的な負担も大きくなるでしょう。
逮捕後すぐに弁護士に依頼すれば、勾留を阻止するためのサポートを受けられ、最長72時間の身柄拘束で解放される可能性があります。また、勾留されてしまったとしても準抗告などの手続きで勾留からの身柄拘束を実現できる可能性があります。 -
(2)被害者との示談交渉を任せられる
金属窃盗の関与で逮捕されてしまったときは、すぐに被害者との示談に着手することが重要です。なぜなら、早期に示談がまとまれば身柄解放や有利な処分を獲得できる可能性が高くなるからです。
しかし、逮捕された被疑者本人は、被害者との示談交渉を行うことができませんので、示談交渉を希望するならすぐに弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士が窓口となって交渉をすれば被害者も安心して交渉に臨むことができるため、スムーズな示談が期待できます。 -
(3)有利な処分を獲得できる可能性を高めることができる
金属窃盗の関与で逮捕されてしまったとしても、不起訴処分を獲得できれば前科がつくことはありません。また、起訴されてしまったとしても執行猶予付き判決を獲得できれば刑務所への収監を避けられますので、不利益を最小限に抑えることができます。
状況に応じて有利な結果を目指すには、早期の段階から適切な弁護活動を行うことが重要です。そのためにも、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
5、まとめ
金属窃盗に直接関与していなくても、盗品と知って買い取った場合は重大な刑事責任を問われる可能性があります。逮捕された後の対応が今後の処分を左右します。
「逮捕の可能性がある」「逮捕されてしまった」という場合は、早期にベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています