オレオレ詐欺で子どもが逮捕! 逮捕後の流れを岡崎の弁護士が解説
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オレオレ詐欺が愛知県で起こった件数は、平成30年度は648件、令和元年度は355件と減少傾向にあります。また全国に目を転じてみると、令和元年に検挙された未成年の数は全国で633人であり、こちらも前年と比べて179人減っています。しかし、オレオレ詐欺に関する注意喚起がさまざまな方法で行われているにもかかわらず、ゼロにはならないのが現状です。
判断能力がまだ低い未成年の場合、オレオレ詐欺だと知らずに加担してしまう場合もあるでしょう。では、もしもお子さんがオレオレ詐欺に加担して逮捕されたら、どうなるのでしょうか。この記事では、オレオレ詐欺(振り込め詐欺)で未成年が逮捕された場合の、その後の流れや処分などについて岡崎の弁護士が解説します。
1、オレオレ詐欺とは何か
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(1)オレオレ詐欺の方法
オレオレ詐欺とは、「俺だよ、俺」と名前を言わずに身内のフリをして電話をかけ、「会社のお金を横領してしまった。お金が今すぐ必要」などといい、心配した家族から財物をだまし取る詐欺のことです。オレオレ詐欺はグループによって行われることの多い犯罪で、グループに加わった人にはそれぞれ分担された役割があります。
オレオレ詐欺の役割は、大きく分けて- 主犯者
- かけ子(被害者に電話をする)
- 受け子(現金やキャッシュカードなどを受け取る)
- 出し子(ATMで現金を引き出す・振り込む)
の4つです。
では、もしもオレオレ詐欺を働いたらどのような罪に問われるのでしょうか。 -
(2)オレオレ詐欺はどんな罪になるのか
オレオレ詐欺にかかわると、「詐欺罪」もしくは「窃盗罪」に問われる可能性があります。同じ犯罪グループに所属していても、役割によって問われる罪の名前や量刑が異なるので注意が必要です。また、以下は成人がオレオレ詐欺を行った場合の話です。未成年が行った場合には少年法に基づき処罰が決まります。
●主犯者・かけ子・受け子は「詐欺罪」に問われる
主犯者、かけ子、受け子が問われるのは、「詐欺罪」です。詐欺罪とは、他人から財物をだまし取る罪のことで、不法な方法で自分もしくは第三者が利益を得る行為は、詐欺罪に当たる可能性があります。刑法246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
●出し子は「窃盗罪」に問われる
さらに、出し子は、他人の口座から現金を引き出す役割のため、オレオレ詐欺への加担とは知らなかったとしても「窃盗罪」に問われる可能性があります。刑法第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 -
(3)詐欺だと知らずに加担しても詐欺罪は成立する
たとえ本人が詐欺だと気づかないまま犯罪に加担していたとしても、詐欺罪は成立する可能性は残ります。いくら本人が「詐欺行為だとは知らなかった」と主張しても、警察には事件に関わったとみなして捜査を行うからです。
ただし、被疑者が未成年である場合には、未成年法による処分が下されます。
2、オレオレ詐欺をした未成年の処分や、逮捕後の流れについて解説
未成年がオレオレ詐欺に加担した容疑で逮捕された場合、どのような流れで処分が決まるのでしょうか。
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(1)少年事件における逮捕後の流れ
●警察による取り調べ・検察官送致
14~19歳の未成年者が起こした少年事件では、警察の取り調べを受けた後に検察へ送致されます。成人であればここで不起訴となる可能性もありますが、少年の場合は不起訴になることはなく、すべて家庭裁判所へ送られます。
●家庭裁判所への送致
続いて家庭裁判所では、調査官による調査が行われます。調査では本人や関係者からの聞き取りや、本人への心理テストが行われます。その結果をもとに、家庭裁判所は「少年審判」をするべきか判断します。少年審判とは、罪を犯した未成年の処分を家庭裁判所が決定する裁判のことです。
無罪が認められた場合や、非行を繰り返す可能性が極めて低いと判断された場合には、審判不開始になります。 -
(2)少年審判で下される4つの処分
少年審判が行われた場合には、以下4つのいずれかの決定が下されます。
●保護処分(保護観察、または児童自立支援施設・少年院への送致)
少年を更生させるための処分です。保護観察とは、家庭に戻った子どもに対して指導を行う処分です。少年院とは、社会へ戻っての更生できないと判断された場合に送られる施設で、少年の矯正を行います。児童自立支援施設とは、置かれた環境では生活指導ができないと判断された場合に、本人が自立できるよう支援する施設です。なお、重い罪を犯した場合や著しい非行が認められた場合には児童自立支援施設ではなく、少年院送致となることが一般的です。
●都道府県知事、または児童相談所長への送致
児童相談所など、児童福祉機関が少年に対して指導を行う処分です。非行の程度は重くはないが、置かれている環境が少年のためにならないと判断された場合に下されます。この処分が下った場合には、児童福祉司や里親が少年を指導することになります。
●検察へ送致(逆送)
保護処分で更生を促すことよりも、刑事裁判をすることが妥当と家庭裁判所が判断した場合、検察へ事件を戻すことを「逆送」と言います。
●不処分
家庭裁判所による調査や少年審判を経て、再び非行する可能性がないと判断された場合には不処分となる場合があります。
3、弁護士ができること
もしもお子さんがオレオレ詐欺の事件で逮捕されたら、まずは一刻も早く弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)取り調べにあたっての助言が受けられる
未成年者であっても、逮捕されれば身柄を拘束されることとなります。その間は弁護士以外の面会が禁止されるため家族も面会できません。何日も身柄を拘束され、家族や友人に会えないとなれば、次第に心細くなってくるでしょう。
「早く解放してもらいたい」と思う気持ちが強まるあまり、警察の取り調べで不利となる行動をしてしまうほか、不公正な自白調書にサインをしてしまう可能性も高まります。「これにサインをすれば帰れる」と言われれば、大人であってもサインをしてしまいそうになるものです。しかし、一度サインをしてしまうと後から証言を取り消すことが相当難しくなります。まずは取り調べで不利になる行動を取らないよう、本人に注意点を伝える必要があります。 -
(2)不当な勾留を防げる可能性が高まる
逮捕から72時間以内に検察官が身柄を拘束する(勾留といいます)請求を行い、裁判官が認めれば、逮捕されてから最大23日間は留置場または少年鑑別所で過ごすというおそれがあります。
しかし、逮捕直後に家族が弁護士へ依頼した場合には、不当に長い勾留を防ぐため検察官と交渉することができます。 -
(3)被害者との示談交渉ができる
被害者との示談が成立すると、被害者の処罰感情が低くなったことから処分が軽減される可能性があります。しかし、加害者本人が被害者との示談交渉をすることは困難なことが多いでしょう。対して、弁護士であれば、第三者の立場から、冷静に被害者との示談交渉を進めることができます。
費用の面から国選弁護士への依頼を考える方もいらっしゃいますが、国選弁護士は勾留決定後に選任されるため、勾留を防ぐことが困難です。勾留されてしまうと逮捕の事実を学校に知られるおそれがありますので、逮捕直後に依頼するなら当番弁護士または私選弁護士に依頼するのがおすすめです。
4、まとめ
今回は、オレオレ詐欺で未成年者が逮捕された場合の流れや処分を中心に解説しました。未成年の場合、かけ子や受け子などの末端の役割を、ほんの出来心で担ってしまうことがあるでしょう。しかし、逮捕され厳しい処分を言い渡されれば、お子さんの将来に大きな影響を与えかねません。できるだけ早いタイミングで弁護士へ相談されることをおすすめします。
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