非嫡出子の法定相続分は? 相続で揉めないための注意点
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愛知県の人口動態統計によると、2019年中の愛知県内の出生数は57145人で、前年よりも4085人減少しています。
このデータからは、愛知県内においても少子化の波が急速に押し寄せていることがわかるでしょう。
嫡出子と非嫡出子が入り交じった家庭では、相続の処理が複雑になりがちです。
血のつながりが薄いからといって、非嫡出子を抜きにして遺産分割の話し合いを進めてしまうと、後々トラブルにとなる可能性もあるでしょう。
この記事では、相続人の中に非嫡出子が含まれている場合に関して、非嫡出子の法定相続分や、遺産分割で揉めないための注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスの弁護士が解説します。
1、非嫡出子とは?嫡出子との違いについて
法律上の「子」には、嫡出子と非嫡出子の2種類がいるということは、多くの方がご存じかと思います。
日本においては、現状嫡出子の方が多数派になっていますが、結婚観の変化なども影響して、近年非嫡出子の人数も増えてきています。
まずは、非嫡出子とはどのような子であるのか、両親とはどのような法律関係を有するのかなどについて、基本的な知識を押さえておきましょう。
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(1)非嫡出子は婚姻していない男女の間で生まれた子
非嫡出子とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子をいいます。
これに対して嫡出子とは、婚姻関係にある男女の間に生まれた子のことです。
なお、「婚姻関係」とはいわゆる「法律婚」のことであり、内縁は含まれません。
嫡出子と非嫡出子は、生物学的には同じ「子」なのですが、法律上の親子関係の観点からは、両者の間には一部ルールの違いが存在します。 -
(2)非嫡出子が父親と法律上の親子になるには認知が必要
非嫡出子は、嫡出子と同様、実の母親の出産により誕生します。
つまり、非嫡出子と母親との間に親子関係があることは明らかですから、法律上も母親との親子関係は自動的に認められます。
これに対して非嫡出子は、母親が婚姻中に懐胎した子ではないため、父親との間の親子関係が推定されません(民法第772条第1項)。
そのため、非嫡出子と父親の間には、法律上の親子関係はないのが原則となります。
非嫡出子と父親との間に法律上の親子関係を生じさせるためには、「認知」という手続きが必要です(民法第779条)。
父親が非嫡出子を認知すると、出生の時にさかのぼって、両者は法律上の親子であったことになります(民法第784条)。
2、非嫡出子の相続権・法定相続分は?
民法第887条第1項によれば、被相続人の子は相続人になるものとされています。
「被相続人の子」とは、嫡出子か非嫡出子かを問わず、被相続人と法律上の親子関係を有する者をいいます。
したがって、非嫡出子であっても、被相続人との間に法律上の親子関係がある限り、相続権を有することになります。
非嫡出子の相続権・相続分については、以下のように考えることができます。
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(1)母親の相続については自動的に相続人となる
非嫡出子は、出生によって当然に、母親との間に法律上の親子関係を生じます。
したがって、母親が亡くなって被相続人となった場合には、欠格事由・廃除・相続放棄などの例外的な場合を除いて、非嫡出子は自動的に相続人となります。 -
(2)父親の相続については認知されていれば相続人となる
一方、非嫡出子と父親との間には、当初は法律上の親子関係はありません。
よって、このままの状態では、父親が亡くなって被相続人になったとしても、非嫡出子が父親の相続人にはなれません。
非嫡出子に父親の相続権を与えるためには、父親が非嫡出子を認知することにより、法律上の親子関係を発生させることが必要です。
なお、認知は戸籍法の定めに従って届出を行う方法のほか、遺言の中で認知をする旨を記載する方法によることもできます(民法第781条第1項、第2項)。
特に遺言によって父親が非嫡出子を認知したケースでは、相続人が遺言書を開封した時点で初めて認知の事実を知ることも多いため、相続の処理が紛糾してしまう可能性が高くなります。 -
(3)法定相続分は嫡出子と同じ
非嫡出子が相続人になる場合、法定相続分は嫡出子と同じです。
以前は非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする旨が民法に規定されていましたが、平成25年9月4日付の最高裁決定により、同規定は憲法第14条に定められる、「法の下の平等」に反し違憲である旨が示されました。
その後、同年12月5日の民法改正により当該規定は削除され、嫡出子と非嫡出子の法定相続分を同じとする現行のルールに落ち着きました。
3、非嫡出子を参加させずに遺産分割協議をするとどうなる?
非嫡出子は、
- 嫡出子との間で生活を共同にしていた時期がない
- 嫡出子と普段からコミュニケーションを取る機会がない
- そもそも嫡出子側が非嫡出子の存在を認識していない
など、嫡出子と疎遠な状態になっているケースも多いのが実情です。
このようなケースでは、非嫡出子を参加させないままに、配偶者と嫡出子だけで遺産分割協議をまとめてしまう場合も見受けられます。
しかし、非嫡出子を参加させずに遺産分割協議を行ってしまうと、後々トラブルに発展してしまう可能性がありますので、十分に注意しましょう。
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(1)遺産分割協議が無効・やり直しになる
民法上、遺産分割は共同相続人間の協議により行うことが規定されています(民法第907条第1項)。
つまり遺産分割協議は、相続人全員が参加したうえで行うことが必須となります。
非嫡出子が相続人になっているケースでは、当然非嫡出子も参加したうえで遺産分割協議を行わなければなりません。
もし非嫡出子を無視して遺産分割協議を行ってしまうと、遺産分割協議自体が無効・やり直しになってしまいます。 -
(2)事前に相続人を調査・確定しておくことが重要
こうした事態を避けるためにも、遺産分割協議を行う際には、事前に被相続人の戸籍を過去にさかのぼって取り寄せ、相続人を調査・確定しておくことが重要です。
被相続人の戸籍を確認すれば、相続人が認識している人以外にも、相続人になるべき非嫡出子がいるかどうかが判明します。
弁護士にご相談をいただければ、戸籍の収集、非嫡出子に対する連絡などについてワンストップで対応いたします。
4、非嫡出子との相続争いを避けるための対策は?
非嫡出子をまじえて遺産分割協議を行う場合、普段から非嫡出子との間でコミュニケーションが取れていないと、冷静な話し合いができないケースがあります。
たとえばひたすら自分の利益を主張し合ったり、被相続人に対する思いや感情をぶつけあって水掛け論に陥ったりするなどが見受けられます。
こうした状況では、遺産分割協議がまとまることは期待できません。
疎遠な非嫡出子との相続争いを避けるためには、どのような対策をとることが有効なのでしょうか。
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(1)被相続人が生前に遺言書を作成する
遺産分割協議が紛糾することを防ぐ方法としては、被相続人の生前に遺言書を作成しておくことが有効です。
遺言書の内容は遺産分割協議に優先しますから、遺言書で相続の方法をあらかじめ指定しておけば、その内容を遺産分割協議の中で争う余地はなくなります。
もっとも、相続人が期待どおりに財産を相続できなかった場合には、不満を募らせてしまい、しこりが残ることも考えられます。
そこで、被相続人がどのような思いで相続分を指定したのかについて、付言事項として遺言書に書き加えておくのが良いでしょう。
遺言書の詳しい作成方法については、弁護士にご確認ください。 -
(2)遺産分割協議の交渉を弁護士に依頼する
遺言書がないケースでは、相続人同士で遺産分割協議を行う必要がありますが、当事者だけでの交渉はどうしてもヒートアップしてしまいがちです。
そこで、遺産分割協議の交渉を弁護士に任せることをおすすめいたします。
弁護士は、専門的・第三者的な視点をもって遺産分割の交渉を仲介しますので、相続人同士で冷静な話し合いをすることが促すことができます。
結果として、当事者だけで話し合うよりも円満かつ迅速に、遺産分割協議を完了できる可能性が高まるでしょう。
5、まとめ
婚姻外で出生した非嫡出子も、被相続人との間で法律上の親子関係が存在する限り、相続権を有します。
現行民法下では、非嫡出子の法定相続分は、嫡出子と同じです。
非嫡出子を参加させずに遺産分割協議を行ってしまうと、後から遺産分割協議自体が無効・やり直しになってしまいます。
そのため、必ず非嫡出子を含めて遺産分割協議を行うことが大切です。
非嫡出子との間での相続トラブルを回避するためには、被相続人が生前に遺言書を作成したり、遺産分割協議を弁護士に仲介してもらったりすることが有効です。
いずれにしても、弁護士のサポートを受けることによって、非嫡出子との間のトラブルを回避できる可能性が高くなるでしょう。
ベリーベスト法律事務所では、相続に関する豊富な経験を有する弁護士が、ご家庭の状況に応じて依頼者を適切にサポートいたします。
相続・遺産分割についてお悩みの方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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