タイムカードがない会社に残業代を請求するための証拠とは
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- タイムカードない会社
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長時間労働が疑われるとして令和5年度に愛知県内の労働基準監督署が監督指導を行った1384事業場のうち、賃金不払残業があったものは74事業場でした。
残業代が正しく支払われていない場合は、会社に対して未払い残業代を請求しましょう。残業代請求の際の証拠としては、タイムカードが代表的ですが、別の証拠を確保することができれば、タイムカードがなくても残業代請求はできます。
ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスの弁護士が解説します。


1、タイムカードがなくても、残業代請求は可能
タイムカードは労働者(従業員)の勤務時間を機械的に記録できる装置ですが、すべての会社(使用者)がタイムカードを導入しているわけではありません。昨今では、デジタルで勤怠管理をする会社も増えています。
タイムカードが設置されていないなどの理由で記録を入手できなくても、別の方法によって残業の事実を立証できれば、残業代を請求することは可能です。
弁護士のサポートを受けながら、残業代請求に役立つ証拠をできる限り豊富に集めましょう。
2、タイムカードがない場合に、残業代請求に役立つ証拠の例
タイムカードの記録以外に、残業代請求に役立つ証拠の具体例としては、以下のものが挙げられます。
- 勤怠管理システムの出退勤記録
- 社用PCのログイン情報
- オフィスの入退館記録
- 業務に関するメール等の送受信記録
- 家族に退勤の連絡をしたメッセージ
- 交通系ICカードの乗車記録
- ETCカードの記録
- 業務日誌
利用できる証拠の種類や価値は、通勤の方法や業務の状況などによって変わります。弁護士と相談しながら、どのような証拠であれば証拠としての価値が高く、確保できるのかをよく検討しましょう。
3、残業代請求の証拠がない場合の対処法
タイムカードの勤怠記録を入手できず、その他の残業に関する証拠も思うように確保できない場合には、会社に対して証拠の開示を求めましょう。
残業の証拠開示を求める方法は、主に以下の2つです。
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(1)弁護士を通じて証拠の開示を請求する
弁護士を通じて残業の証拠を開示するよう求めれば、会社は応じることがあります。法的な手段を用いて調査されると、結局開示しなければならない可能性が高いためです。
弁護士の連絡によって残業の証拠の開示を受けることができれば、その後の残業代請求に関する交渉もスムーズに進む可能性が高いでしょう。
労働審判や訴訟などの裁判手続きを経ることなく、早期に残業代の支払いを受けることができれば、費用や労力を節約できます。
手元に残業の証拠がなく困っているときは、まず弁護士に相談してみましょう。 -
(2)訴訟手続きの中で開示を求める
弁護士から連絡しても、会社は残業に関する証拠の開示に応じるとは限りません。頑なに証拠の開示を拒否するケースもあります。
会社に残業の証拠を開示してもらえないときは、訴訟を通じて証拠の開示を求めることが考えられます。具体的には、以下のような方法があります。① 裁判所に対する求釈明
審理のために必要であることなどを主張して、労働者側で確保するのが難しい証拠の開示を促すことを、裁判所に対して求めます。
② 文書送付嘱託の申立て(民事訴訟法第226条)
残業の証拠に当たる文書を所持している者に対して、裁判所からその文書の送付を依頼してもらいます。交通系ICカードの記録やオフィスの入退館記録など、会社以外の者が所持している残業の証拠を確保するために有力な手段です。
③ 文書提出命令の申立て(同法第220条~第225条)
残業の証拠に当たる文書を所持している者に対して、裁判所に提出を命ずるよう申し立てます。会社が所持する文書も、その他の者が所持する文書も、いずれも文書提出命令の対象とすることができます。
会社が文書提出命令に従わないときや、意図的に滅失させたときは、裁判所は残業に関する労働者側の主張を真実と認めることができます(同法第224条)。
また、会社以外の者が文書提出命令に従わないと「20万円以下の過料」に処されます(同法第225条)。
訴訟手続きを通じた残業の証拠の開示請求には、専門的な対応が必要になります。弁護士のサポートを受け、適切に対応を進めましょう。
お問い合わせください。
4、未払い残業代請求について弁護士ができるサポート
会社に対して未払い残業代を請求する際には、弁護士に依頼することをおすすめします。
未払い残業代請求について、弁護士ができる主なサポートは以下のとおりです。
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(1)残業に関する証拠の収集
残業代請求を成功させるためには、残業の事実を立証できる証拠の確保が非常に大切です。
弁護士は、状況に応じて収集できる残業の証拠の種類や、その収集方法を検討したうえで分かりやすくアドバイスします。
また、会社が証拠の開示を拒否している場合は、弁護士から会社に連絡して証拠の開示を求めます。それでも会社が証拠を開示しないときは、訴訟を通じて開示を求める手続きをサポートします。
タイムカードがないなどの理由で、残業の証拠の確保に困っているときこそ、弁護士にご依頼ください。 -
(2)正しい残業代の額の計算
残業代の金額は、残業時間や残業の種類などを考慮したうえで計算します。残業代の計算方法はかなり複雑なので、法律に関する正しい知識が欠かせません。
弁護士は、残業時間を漏れなく集計したうえで、残業代の額を正しく計算します。働いた時間に応じた適切な残業代を回収したいなら、弁護士のサポートを受けましょう。 -
(3)会社との和解交渉
弁護士は、残業代請求に関する会社との和解交渉を全面的に代行します。
会社はさまざまな理由を付けて、未払い残業代の支払いを拒んだり、減額を求めてきたりするかもしれません。弁護士は依頼者の希望を踏まえつつ、法的根拠を示しながら会社と交渉を行い、依頼者にとって有利な内容での合意を目指します。 -
(4)労働審判の申立て
会社との交渉がまとまらないときは、次の手段として労働審判を申し立てることが考えられます。
労働審判は、地方裁判所で行われる非公開の手続きです。
裁判官1名と労働審判員2名で構成される労働審判委員会が、労使の主張を公平に聞き取ったうえで、調停(合意)または労働審判(労働審判委員会の判断)によって解決を図ります。
労働審判を通じて有利な解決を得るためには、残業に関する客観的な証拠の提出を含めて、法的な根拠に基づく主張・立証を行うことが大切です。
弁護士は、労働審判の申立ての全面的な代行が可能です。集めた証拠を踏まえた適切な主張を展開し、労働者側にとって有利な解決の実現をサポートします。 -
(5)訴訟の提起
労働審判に対して不服がある当事者は、2週間以内に裁判所に対して異議を申し立てることができます。異議が申し立てられた場合は、自動的に訴訟へと移行します。また、労働審判をしなくとも、裁判所に訴訟を提起することも可能です。
訴訟は、裁判所で行われる公開の紛争解決手続きです。残業代請求訴訟では、労働者側は残業の事実を証拠に基づいて立証することが求められます。訴訟手続きは複雑なので、法律や手続きに関する正しい知識と経験が必要不可欠です。
弁護士は、訴訟の提起に必要な準備や、訴訟期日での対応を全面的に代行します。裁判所に提出する書類の作成や、法廷における争点整理・尋問などの手続きもすべて弁護士に任せられるので安心です。
5、まとめ
タイムカードの記録は、残業代請求に役立つ有力な証拠のひとつです。しかし、タイムカードを設置していない会社もたくさんあります。
タイムカードが設置されていなくても、勤怠管理システムの記録、オフィスの入退館記録、業務メールの送受信記録、交通系ICカードの乗車記録など、さまざまな証拠を利用できる余地があります。
もし手元に残業の証拠がないとしても、諦める必要はありません。弁護士に相談すれば、残業の証拠を収集する方法についてアドバイスを受けられます。
また、会社が証拠の開示を拒否している場合も、弁護士を通じて開示請求を行えば、有力な証拠を入手できる可能性があります。未払い残業代請求を行う際には、早い段階で弁護士に相談しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、未払い残業代請求に関するご相談を随時受け付けております。
会社に対して未払い残業代を請求したいと考えている方は、ぜひお早めにベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています