勤務時間別|休憩時間のルールと注意点

2024年04月23日
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勤務時間別|休憩時間のルールと注意点

令和3年の愛知労働局における監督指導、申告処理および司法処分の状況によると、「労働時間・休日」に関する違反が1178件と違反項目のなかで最も多くを占めていました。

労働者には、勤務時間の長さに応じて一定の休憩時間をとり、心身を休める権利が保障されています。しかし、勤務時間によって休憩時間は変わるため、正しく知っておかないと「実は休憩時間が足りなかった」ことになりかねません。たとえば、休憩時間中の電話やメール対応、来客待ちの時間に対して、疑問に感じている方もいるはずです。

そこで今回は、休憩時間の定義や勤務時間別の休憩時間、休憩時間と労働時間の判断について、ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスの弁護士が解説します。

1、労働基準法で定められている休憩時間の定義

まずは、法律における休憩時間と休憩の三原則について解説します。

  1. (1)労働基準法における休憩時間とは

    休憩時間とは、労働者が労働から解放され、自由に過ごせる時間のことです。労働基準法では、労働時間が6時間超の場合は最低でも45分の休憩時間を労働時間の途中に保障することが義務付けられています(詳しくは「2、勤務時間別|休憩時間」で後述)。

    休憩時間は、労働基準法34条によって会社(使用者)が労働者に付与することが義務付けられています。そのため、休憩時間を従業員に与えない使用者は労働基準法違反となり、労働監督署から是正指導を受けたり、悪質な場合は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金を科せられる可能性があります。

    なお、取得できなかった休憩時間を賃金で代替することは認められていません。つまり、休憩時間を付与せずに代わりに給料を増やすことは法的に許されていません。

  2. (2)休憩の三原則とは

    休憩時間に関するルールとして、労働基準法によって以下の三原則が設けられています。

    • 一斉付与の原則
    • 自由利用の原則
    • 途中付与の原則


    一斉付与の原則とは、すべての従業員に対して同時刻に休憩時間を付与する必要があるという原則です。たとえば、12〜13時の昼休みに全従業員が一斉に休憩を取るなどが挙げられます。また、原則として事業者内の作業場単位ではなく、1つの事業場単位で一斉に休憩時間を付与することも労働基準法によって定められています。

    自由利用の原則とは、労働者が休憩時間を会社に干渉されず自由に使えることを保障するものです。たとえば、休憩時間中に社員が事務所の外に出て昼食を取る、私用の電話をかける、短いウォーキングをするなど、自分の好きなように時間を使えます。この間、使用者が労働者に業務を命じること、また職務に従事させることを禁じられています。もし、この原則が守られていない場合、休憩時間としては認められず、その時間も労働時間として計算されます。

    途中付与の原則とは、勤務時間の途中で休憩を与えるべきという原則を指します。特に、労働時間が6時間を超える際には、勤務時間の途中で休憩時間を与えなければなりません

2、勤務時間別|休憩時間

ここでは、勤務時間の長さによって定められている休憩時間について解説します。

  1. (1)6時間以内・6時間超・8時間超の休憩時間

    労働基準法34条1項によれば、勤務時間の長さによって、休憩時間は以下の通り定められています。

    • 6時間以内の勤務時間の場合……休憩時間なし
    • 6時間超8時間以下の勤務時間……45分
    • 8時間超の勤務時間……1時間


    労働基準法の休憩時間はあくまで最低限であり、具体的な時間は、労働者と使用者間の協定や就業規則で定められます。

    たとえば、勤務時間が6時間以内の場合、休憩時間を設けるかどうかは企業側が決めても問題ないとされています。職場や業種によってはより長い休憩時間を設けている場合もあるでしょう。

    また、休憩の三原則を満たしている場合は、休憩時間を分割しても問題ありません。たとえば、労働時間が8時間超えの場合、午前に15分、午後に45分など休憩時間を分けることも可能です。

    なお、正社員やパート・アルバイトなどの雇用形態による休憩時間の違いは存在しません。

  2. (2)残業した場合の休憩時間

    残業をすると、通常の休憩時間と同様に、1日の労働時間が6時間を超えた場合は45分の休憩時間、8時間を超えた場合は1時間の休憩時間が保障されます。

    たとえば、7時間の労働時間で45分の休憩をとった日に、1時間の残業が発生した際には、15分の休憩時間を設けて合計1時間の休憩時間が付与されます。

3、休憩時間の特例

ここでは、休憩時間の三原則(一斉付与・自由利用)が対象外となる特例について紹介します。

  1. (1)一斉付与の原則が適用外となるケース

    以下の業種では、休憩時間を一斉に与えることが困難なため、適用外とされています。

    • 運輸交通業
    • 金融広告業
    • 映画、演劇業
    • 商業
    • 通信業
    • 保健衛生業
    • 官公署
    • 接客娯楽業


    また、労使協定を結んだ際に一斉付与の原則が適用外となる取り決めがあった場合も、休憩時間の特例が認められています。

  2. (2)自由利用の原則が適用外となるケース

    自由利用の原則とは、休憩時間に企業側が干渉せずに自由に過ごさせるルールです。ただし、以下の業種では適用外となります。

    • 警察官、消防吏員、常勤の消防団員など
    • 乳児院、児童養護施設および障害児入所施設で児童と起居をともにする職員
    • 居住訪問型保育事業の労働者で家庭的保育者

4、ケース別│休憩時間と労働時間の判断ポイント

実際の勤務の中で、「これは休憩時間にあたるのか?適切にとれているのか?」など疑問を感じることもあるでしょう。ここでは、具体的なケースにおける休憩時間と労働時間の判断について解説します。

  1. (1)休憩中の電話やメール、来客対応などの待ち時間

    たとえば、昼休みの休憩時間に電話番をする、業務上のメールをする、来客対応に備えて待機するなどをした場合、その時間は休憩時間にはあたりません。休憩時間は労働者自身が自由に過ごす時間です。そのため、休憩中に電話番やメール、来客対応を求められた場合は、別途休憩時間を設ける必要があります。また、業務内容を話し合うことが前提の強制的なランチミーティングも、休憩時間に該当しません。

  2. (2)休憩時間を返上して帰宅した場合

    休憩時間を返上して早めに帰宅したいときもあるかもしれません。しかし、法的には休憩時間は定められた労働時間に対し付与されるべき休息の時間です。そのため、休憩時間の返上による勤務時間の短縮は認められません

  3. (3)一人だけの勤務時間

    一人勤務、いわゆるワンオペ勤務の場合でも、法律では休憩時間の確保を義務付けています。たとえば、1時間の休憩時間が付与されていている場合、その間も電話や来客の対応を任せられていた場合は、休憩時間と認められずに違法となる可能性があります。

  4. (4)日をまたぐ夜勤

    日をまたぐ夜勤とは、日付の変わる0時をまたいで勤務する業務形態を指します。たとえば、22時から勤務を開始し、翌日7時までの勤務時間などが挙げられます。この場合も、労働基準法の「8時間超の労働の場合、1時間以上の休憩」を必ず守らなければならない点は同じです。

  5. (5)仮眠時間

    仮眠時間は、労働者の心身を休ませる時間のため、就業規則で休憩と規定している会社もあります。しかし、メンテナンスや警備員など緊急対応が求められる業種である場合や休憩が途中で中断された場合その時間は労働時間と判断される可能性が高くなります。また、仮眠時間中に電話対応を義務付けられている場合も、勤務時間と判断される可能性があります。

  6. (6)住み込み

    住み込みで働く場合でも、休憩時間は、6時間以上の労働には45分以上、8時間以上の労働には1時間以上が必要です。しかし、家事労働者など一部の職種では、労働時間や休憩時間の定義が曖昧になるケースがあります。そのため、事前に具体的な労働内容や時間、休憩時間が就業契約に明記されているか確認することが大切です。

5、まとめ

この記事では、休憩時間の定義や勤務時間別の休憩時間、休憩時間の特例、具体的なケースについて解説しました。

すべての労働者には、一定の労働時間に対して決められた休憩時間が与えられるように義務付けられています。そのため、適切な休憩時間が設けられていない場合や、休憩時間に労働に値する作業を強いられた際には、労働基準法に違反している可能性があります

休憩時間に関するトラブルが起きた際には、労働基準監督署への相談も解決策のひとつです。ただし、労働基準監督署には、労働時間に対する未払賃金を支払わせるなどの強制力はありません。

労働基準監督署を介しても解決が難しい場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。適切な休憩時間が付与されているかどうか、休憩時間に労働した場合の未払賃金はないか、適切に判断し、対策についてアドバイスします。勤務時間の休憩についてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています