定時後に行われる会議の残業代が発生しないと言われた! 違法性は?
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2021年に愛知県内の労働基準監督署による監督指導が行われた事業場は6700事業場でした。
「定時後の会議には残業代(残業手当)を支払わない」このような取り扱いをしている会社も、労働基準法違反のため、監督指導の対象となります。定時後の会議に出席した場合、会社に対して残業代を請求できます。適正額の残業代を請求するため、一度弁護士へご相談ください。
今回は、定時後の会議について発生する残業代のルールなどを、ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスの弁護士が解説します。
1、定時後に行われる会議にも、残業代は発生する
労働契約で決まっている勤務時間を過ぎてから行われる会議に出席した場合、残業代が発生します。
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(1)定時後の会議は残業に当たる
労働契約で定められる基本給は、同じく労働契約で定められる勤務時間(所定労働時間)に対応しています。いわゆる「定時」とは、所定労働時間のことです。
したがって、定時を過ぎてから会社の指揮命令下で労働に従事した場合、会社に対して残業代を請求する権利があります。
会議への出席も、会社の指示によって行われる労働に当たるため、残業代が発生します。 -
(2)定時後の会議に適用される割増賃金率
定時後に行われる会議には、以下の割増賃金率が適用されます。
法定労働時間※を超えない場合 割増なし 法定労働時間※を超える場合 通常の賃金に対して125%以上
※月60時間を超える部分については150%以上(中小企業については、2023年3月までは125%以上)午後10時から午前5時までに行われる場合 上記の各割増賃金率に25%を加算 ※法定労働時間:1日当たり8時間、1週間当たり40時間(労働基準法第32条)
2、残業代を請求する際には証拠が必要
会社に対して残業代を請求するには、残業をしたことについての証拠を集める必要があります。
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(1)残業代請求の有効な証拠の例
残業代請求を行う際に有効となる証拠としては、以下の例が挙げられます。
- タイムカード、勤怠管理システムの記録
- オフィスの入退館履歴
- 交通系ICカードの乗車履歴
- 残業を指示するメール
- 業務日誌
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(2)証拠が手元にない場合の対処法
残業時間を証明する証拠が手元にない場合は、会社に対して開示請求を行うことが考えられます。
会社には、タイムカードや勤怠管理システムの記録、業務上のメールなどの記録が残っている可能性があります。民事訴訟を提起して、証拠保全(民事訴訟法第234条)や文書提出命令(同法第219条)の申立てなどを行えば、これらの有力な証拠を確保できるかもしれません。
また、民事訴訟における強制的な手続きが行われることは、会社にとっても望ましくありません。そのため、弁護士を通じて証拠開示の交渉を行えば、会社が任意に応じるケースもあります。
3、未払い残業代を請求する際の手順
会社に対して未払い残業代を請求する際には、以下の流れで対応を進めましょう。
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(1)弁護士に相談・依頼する
残業代請求を行う際には、最初に弁護士へ相談することをお勧めいたします。残業の証拠収集などについてアドバイスを受けることができ、さらに残業代請求の手続きも一任可能です。
適正額の残業代をスムーズに獲得したい場合には、お早めに弁護士までご相談ください。 -
(2)労働契約の内容を確認する
残業代を計算するに当たっては、労働契約で定められている基本給・各種手当の金額と、所定労働時間(定時)を確認する必要があります。
弁護士に相談する際には、お手元の雇用契約書をご持参ください。雇用契約書が手元にない場合には、会社に対して開示を請求しましょう。 -
(3)残業時間を集計し、残業代を計算する
次に、残業に関する証拠を参照して、実際の残業時間を計算します。残業時間は、以下の種類ごとに集計しましょう。
残業の種類 割増賃金率 法定内残業
※法定労働時間を超えない残業割増なし 時間外労働
※法定労働時間を超える残業通常の賃金に対して125%以上
※月60時間を超える時間外労働については150%以上(中小企業については、2023年3月までは125%以上)休日労働
※法定休日に行われる労働通常の賃金に対して135%以上 深夜労働
※午後10時から午前5時までに行われる労働通常の賃金に対して125%以上 時間外労働かつ深夜労働 通常の賃金に対して150%以上
※月60時間を超える時間外労働については175%以上(中小企業については、2023年3月までは150%以上)休日労働かつ深夜労働 通常の賃金に対して160%以上
残業時間を集計したら、以下の計算式に従って残業代を計算します。
- 残業代
=1時間当たりの基礎賃金×割増賃金率×残業時間数 - 1時間当たりの基礎賃金
=残業代や賞与などを控除した賃金の総支給額÷月平均所定労働時間
- 残業代
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(4)会社と交渉する
残業代の計算が完了したら、その金額の支払いを求めて会社と交渉します。
会社が何らかの妥協案を提示してきた場合には、早期解決のメリットと回収額が減るデメリットを比較して、受け入れるかどうかを適切に判断しましょう。会社との間で合意が成立したら、その内容をまとめた合意書を締結し、残業代の精算を行います。 -
(5)労働審判を申し立てる
会社が残業代の支払いに応じない場合は、裁判所に労働審判を申し立てることが考えられます。
労働審判は、労使間の紛争を解決するための手続きです。裁判官と2名の労働審判員が労使双方の主張を聴き取ったうえで、調停による紛争解決を試みます。調停が成立しない場合は、労働審判によって紛争解決の結論が示されます。
労働審判の審理は、原則として3回以内に終結するため、早期解決を見込める点が大きなメリットです。ただし、労働審判に対して2週間以内に異議申立てがなされた場合には、自動的に訴訟手続きへ移行します。 -
(6)訴訟を提起する
残業代未払いの問題を解決する最後の手段は、裁判所に訴訟を提起することです。
残業代請求訴訟では、労働者が残業代請求権の存在を証拠に基づいて立証し、会社がそれに対して反論を行います。裁判所が労働者側の主張に理由があると認めた場合、残業代の支払いを命ずる判決が言い渡されます。
判決が確定した後は、判決内容に従って残業代の精算を行います。判決内容を無視して、会社が残業代の支払いを拒否する場合は、裁判所に強制執行を申し立てることが可能です。
4、残業代請求を弁護士に依頼するメリット
会社に対する残業代請求を行う際には、弁護士へのご依頼をお勧めいたします。残業代請求を弁護士に依頼する主なメリットは、以下のとおりです。
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(1)残業代を正確に計算できる
弁護士は、労働契約と労働基準法の内容、残業の実態などに基づき、法的な観点から残業代を正確に計算します。
ご自身が行った残業の実態に応じて、どのくらいの残業代を獲得できるのかを正確に知ることができる点が、弁護士に依頼するメリットのひとつです。 -
(2)会社との交渉や法的手続きを一任できる
残業代請求に必要な手続きは、弁護士が全面的に代行いたします。
会社との交渉や、労働審判・訴訟などの法的手続きについても、弁護士が一括してご対応いたします。弁護士へのご依頼により、残業代請求の労力を大幅に軽減することが可能です。 -
(3)適正な残業代を獲得できる可能性が高まる
弁護士を通じて請求を行えば、残業代請求の法的根拠を説得的に主張することができます。その結果、会社が残業代請求に応じやすくなるほか、労働審判や訴訟においても、有利な結果が得られる可能性が高まります。
残業代の支払いを受けることは労働者の権利ですが、その権利を効果的に行使するためには、法的な専門知識が必要不可欠です。弁護士は、依頼者が適正な残業代を獲得できるように、法的な観点からサポートいたします。
お問い合わせください。
5、まとめ
定時後に行われる会議に労働者を無給で参加させることは、労働基準法に違反するサービス残業に当たります。もし会社に違法なサービス残業を強いられている場合は、未払い残業代が発生している可能性が高いので、弁護士への相談をおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、残業代請求に関する労働者からのご相談を随時受け付けております。労働基準法や労働契約の内容に従って正確に残業代を計算した上で、適正額の残業代を早期に獲得できるようにサポートいたします。
適切に残業代が支払われていないのではないかと疑問をお持ちの方は、未払い残業代の有無を確認するため、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています