町内会費を払わないとゴミを捨てられないって本当? 対策は?

2024年06月04日
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町内会費を払わないとゴミを捨てられないって本当? 対策は?

岡崎市では「ごみ出し3箇条」として、資源とごみを正しく分別する、正しい収集日に朝8時30分までに出す、分別ごとに決められたステーションに出すというルールが定められています。多くの市民の方がルールを守って正しくごみを出しているはずですが、ごみ出しに関するご近所トラブルが起きることもめずらしくありません。

たとえば、街の各所にはごみを回収するためのステーションが設置されていますが、ステーションを利用するには「町内会などの自治会に加入して会費を支払う必要がある」などと言われた場合はどうなるのでしょうか?

ごみ回収をおこなう自治体側が町内会などへの加入を条件にしていないなら、会費を払う必要があるのか疑問に感じる方もいるでしょう。本コラムでは、町内会費などを支払わないとごみ出しをできないと言われたときの対応について、ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスの弁護士が解説します。

1、町内会などの自治会への加入は強制ではない

まずは町内会をはじめとした自治会がどのような団体なのかを法的な角度から確認していきましょう。

  1. (1)町内会など自治会の法的な位置づけ

    〇〇町内会・〇〇自治会・〇〇町会・〇〇部落会・〇〇区会・〇〇区などの名称で呼ばれる地域住民の組織は、法律の定めによらない任意団体です。組・班・支部といった下部組織も同じ扱いになります。

    このような組織を法的には「権利能力なき社団」と呼び、会社や組合といった法人格をもつ組織と比べると法的な権利能力において多くの制約を受けます。

    たとえば、団体名義では登記できない、銀行口座を開設できないといった点が挙げられます。

  2. (2)自治会への加入義務はない

    自治会が法的な根拠をもたない権利能力なき社団である以上、加入の義務はありません

    たとえば会則において「本地区に居住している住民はすべて加入の義務がある」と定められていても法的な拘束力はないので、加入を断ることも、加入したうえで脱退するのも自由です。

2、「ごみ捨てには自治会への加入が必須」と言われた場合の対応

お住まいの地域で「自治会に加入しなければごみ集積所にごみを出してはいけない」と言われた場合はどうすればよいのでしょうか?

  1. (1)役所のごみ収集を管轄する部署に問い合わせる

    まず確認するべきは、実際にごみ出しに自治会への加入が必要なのかどうかという点です。

    役所のごみ収集を管轄している部署に問い合わせて、自治会に加入していなければごみを出せないのかを確認しましょう。役所側は地域のごみ集積所のすべてを把握しているので、実際にそのようなルールがあるのか、自治会に加入していない住民が出したごみは回収しないのかといった点も明らかになります。

  2. (2)自治会の担当者と交渉する

    ごみ収集を管轄する役所側から「自治会に加入していなくてもごみ出しは可能」という回答を受けたら、自治会の担当者にその旨を伝えて交渉しましょう。役所側からの回答があれば、問題なくごみ出しを認めてもらえるはずです。

    自治会への加入をためらう理由のひとつとして、町内会費などのお金の問題ではなく、加入によって清掃活動や会合などの手間が増えることへの懸念が挙げられます。

    たとえば「会費は支払うが諸活動への参加は控えたい」といった折衷案を認めてもらい解決するという方法もあるでしょう。

  3. (3)自分でごみ処理場へ運ぶ

    自治会に加入しなければごみ出しが許されない事情がある場合は、自分でごみ処理場へ運ぶという解決法もあります。

    岡崎市には板田町に中央クリーンセンターが設置されており、各種ごみの持ち込みを受け付けているので、ごみ集積所を利用しなくても家庭ごみの処分が可能です。

    ただし、指定ごみ袋に入る程度の家庭ごみは指定された日時・場所での収集が原則であること、ごみ処理場でのごみ捨ては有料で重量に応じて料金がかかることを理解しておきましょう。

    岡崎市の中央クリーンセンターの場合、令和5年10月1日から10キログラムあたり200円で有料となっています。

  4. (4)自治会が管理していないごみ集積所を作る

    自治会への加入が必要なごみ集積所を利用せず、ごみ処理場への自力での持ち込みも難しい場合は、自治会が管理していないごみ集積所を新たに設置するという方法で解決できるかもしれません。

    もちろん、自分勝手に「ここをごみ集積所にする」と決めてもごみは回収してもらえず、勝手にごみを出せば不法投棄になってしまうので、市などの自治体による新設の許可が必要です。

    岡崎市では、可燃ごみ・不燃ごみの場合は20世帯ごとに1カ所、リサイクルごみの場合は200世帯ごとに1カ所のごみステーションを設置するという基準があります。ただし、岡崎市では「新設の申し出は各町内会の総代から」という決まりがあるので、町内会と対立した状況で新設を申し出るのは難しいでしょう。

3、ごみ捨てに自治会加入が必須となる可能性があるケース

基本的に市などの自治体が把握しているごみ集積所へのごみ出しは、町内会など自治会に加入していなくても可能です。ただし、次に挙げるようなケースでは、実際に自治会への加入が必須となる可能性があります。

  1. (1)ごみ集積所が自治会会員の私有地である場合

    ごみ集積所が自治会に加入している会員の私有地である場合は、土地所有者の権限として「会員以外のごみ出しを認めない」とすることも可能です。

    他人の私有地はもちろん、自分の土地であっても廃棄物を正しくない方法で捨てると不法投棄になってしまうので、注意を無視してごみを捨てると違法になるおそれがあります。

  2. (2)ごみ集積所が自治会の所有物である場合

    ごみ集積所の設置や管理に町内会などの自治会が費用を捻出しており、自治会の所有物としている場合は、会員外のごみ出しが認められないことがあります。

    たとえば、猫やカラスなどによる散乱防止のために自治会が費用を負担してごみを集積する簡易的な
    建物を設置した場合は、ごみ出しに自治会への加入が必要になるというケースも考えられます。

4、自治会の未加入や脱退で嫌がらせを受けたときの相談先

町内会などの自治会に加入しなかった、あるいはいったん加入したものの途中で脱退したことを理由に、本来であれば認められるはずのごみ出しを許さないなどの嫌がらせを受けている場合は、どうやって解決すればよいのでしょうか?

  1. (1)自治会の役員などに相談する

    「町内会の会員でなければごみ出しはできない」と主張しているのは個人で、自治会の総意ではない可能性もあります。町内会長など自治会の役員に相談すれば問題なくごみ出しを許してもらえたり、話し合いによって折衷案の提案を受けたりするかもしれません。

    岡崎市に限らず、多くの自治体はごみ出しのトラブルについて「地域住民の間で穏便に解決してほしい」というスタンスです。まずは役員などに相談して自治会の総意を確認しましょう。

  2. (2)不法行為があれば警察に届け出する

    「地域のごみ出しをさせない」という行為そのものは、不便を強いられるとはいえ、直ちには違法と判断されない可能性もあります。
    ただし、自治会費を払わない住民に対してごみ捨て場の利用を禁止した自治体に慰謝料の支払いを命じた裁判例もあり、事案の内容によっては、ごみ捨てを制限されることが違法となる場合もあります。

    また、ごみ出しの問題だけでなく、自宅の前にごみや汚物をまき散らされたり、誹謗中傷する張り紙を貼られたりといった具体的な被害が生じている場合は、もはやご近所トラブルの域にあるとは言えないでしょう。

    不法行為がある場合は、管轄の警察に相談し、加害者の特定や処罰を求める届け出を検討することをおすすめします

  3. (3)弁護士に相談して解決する

    自治会や役所への相談では解決できない場合は、弁護士に相談して解決するという手段もあります。

    弁護士に相談すれば、公平な第三者としての立場で法的な角度からごみ出しに関する権利を整理し、実際に自治会に加入していなければごみを出す権利がないのかを明らかにしたうえで、有効な方策などのアドバイスが得られます。自治会との間に立ってごみ集積所の利用を認めてもらうための話し合いを進めるよう依頼することも可能です。

    弁護士への依頼には費用が発生しますが、相談してアドバイスを受けるだけなら大きな支出にならないケースもあります。法律の考え方や正しい権利関係を知るためにも、自分ひとりで悩むのではなく弁護士への相談をおすすめします。

5、まとめ

町内会などの自治会にはたとえ会則の規定があっても加入の義務はなく、加入していなくても市などの自治体がおこなうごみ収集を利用できます。

基本的に、自治会に加入していなくても自治体が指定するごみ集積所へのごみ出しは可能です。ただし、ごみ集積所とされている土地や建物の権利を自治会が所有しているケースもあるため、まずは役所などへの確認をおこなったうえで対応を考えなければなりません。

ごみ出しに関して町内会などの自治会やご近所の住民とトラブルになっている場合は、弁護士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスでは、ごみ出しなどの生活に関わるさまざまなお悩み・トラブルのご相談も受け付けています。法的な角度から有効な方策をお伝えするので、まずはお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています