離婚貧乏とは? 貧困の原因や回避するためのポイントを解説
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離婚を原因に貧乏になってしまうことを「離婚貧乏」と呼ぶことがあります。離婚をして新たな人生のスタートを切る際、経済的な余裕がないと離婚を後悔してしまうかもしれません。
男性と女性で異なる原因もあるものの、離婚貧乏に陥る共通の原因は、十分な準備をせずに離婚をしてしまうことといえるでしょう。離婚貧乏を回避するには、事前にチェックしておきたいポイントがあるため、配偶者へ離婚を切り出す前に確認してみましょう。
今回は、離婚貧乏の原因や離婚貧乏を回避するためのポイントについて、ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスの弁護士が解説します。


1、離婚貧乏とは?
離婚貧乏とは、離婚を原因として経済的な困窮に陥ることをいいます。
婚姻中は、夫婦で協力して生活をしますが、離婚をすると別々に生活しなければならず、多かれ少なかれ経済的な影響は避けられません。特に離婚に際して以下のような状況に心当たりがあれば、「離婚貧乏になった」と考えられるでしょう。
- 養育費や慰謝料の相場を知らずに、自分に不利な条件で合意してしまう
- 財産分与や年金分割を請求できると知らずに時効を迎えてしまう
- 別居時の引っ越し代、家具や家電の購入費用の支払いで、手持ちのお金がほとんどなくなる
- 別居中でも生活費を請求できると知らずに長期間別居後、離婚が成立した
- 離婚後に仕事を探し始めたが、なかなか就職先が見つからない
このような状況に陥ると、離婚したことを後悔する可能性もあるため、それを避けるには十分な準備をしてから離婚をすることが大切です。
2、【男女別に見る】離婚貧乏に陥る原因
離婚貧乏になる原因には、離婚条件の見落としなどがあります。一方、男性と女性では、よくある離婚貧乏の原因が異なる場合もあります。以下では、男女別に離婚貧乏に陥る原因を紹介しましょう。
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(1)男性側が離婚貧乏に陥る原因
男性側が離婚貧乏に陥る主な原因としては、以下の5つが挙げられます。
① 慰謝料の支払い
② 養育費の支払い
③ 婚姻費用の支払い
④ 財産分与
⑤ 年金分割
男性の収入が女性側よりも多いケースでは、女性側に金銭を多く支払うことで離婚貧乏に陥る傾向にあります。
① 慰謝料の支払い
男性側が不倫やDV、モラハラをしていた場合、女性側から高額な慰謝料の請求がされることが多いです。慰謝料の金額には一定の相場がありますが、相場を理解していないと、相手の請求額をそのまま支払ってしまうかもしれません。
高額な慰謝料の支払いに応じてしまうと、多くの財産を失い、離婚貧乏に陥ってしまうこともあるでしょう。
② 養育費の支払い
子どもがいる夫婦が離婚する場合には、養育費の支払いが必要です。離婚時に女性側が親権を獲得すれば、養育費の支払いは主に男性側が行うことになります。
養育費の金額は、子どもの人数・年齢と、夫婦の収入に応じた相場があります。しかし、それを知らず、自身の収入に見合わない高額な養育費の取り決めをしてしまうと、長期間の養育費の支払いにより少しずつ離婚貧乏に陥っていくでしょう。
③ 婚姻費用の支払い
婚姻費用とは、別居後離婚が成立するまでの間に支払われる生活費のことをいいます。別居時には女性側が子どもを連れて出ていくケースが多く、さらに収入は男性のほうが多いケースが多いため、婚姻費用の支払いは主に男性側が行うことになります。
養育費と同様に、婚姻費用も子どもの人数・年齢と、夫婦の収入に応じた相場があります。相場を上回る婚姻費用を定めてしまうと、別居期間が長くなればなるほど経済的な負担が大きくなり、離婚貧乏に陥ってしまうでしょう。
④ 財産分与
財産分与とは、離婚時に夫婦の共有財産を貢献度に応じて分け合う制度のことです。対象となる財産には、夫婦が協力して築いた以下のような財産が含まれます。- 現金、預貯金
- 不動産
- 車
- 保険
- 退職金
- 住宅ローン
特に熟年夫婦の場合、共有財産の総額が大きくなるため、離婚による財産分与で、男性は多くの財産を女性側に渡すことも大いにありえるでしょう。十分な知識のない状態で財産分与に応じてしまうと、自分に不利な条件で財産分与をしてしまうリスクもあります。
また、退職金も財産分与に含まれるため、退職金を老後の資金にしようと考えていた男性にとっては、老後の資金計画が崩れて離婚貧乏に陥る原因となるでしょう。
⑤ 年金分割
年金分割とは、離婚時に婚姻期間中の保険料納付額に応じた厚生年金を分割し、それぞれが自分の年金にできる制度です。
男性側が納めた年金記録を女性側に分けることになれば、男性側は、本来であれば受け取れるはずの年金が減ってしまい、老後に離婚貧乏に陥る可能性があります。 -
(2)女性側が離婚貧乏に陥る原因
女性側が離婚貧乏に陥る主な原因としては、以下の3つが挙げられます。
① 慰謝料の支払い
② 再就職の難しさ
③ 養育費の未払い
婚姻中に夫の収入で生活していた場合、離婚により収入が激減することで離婚貧乏に陥る傾向があります。
① 慰謝料の支払い
女性側が不倫などをしていた場合、男性側に慰謝料を支払わなければなりません。
男性側と比べて自分の名義の財産が少ない場合、高額な慰謝料を支払うことで、手持ちのお金がほとんどなくなり、離婚貧乏に陥ってしまうでしょう。
② 再就職の難しさ
結婚や出産をきっかけに仕事を辞めた方は、自分で収入を得るため、離婚とともに再び仕事を始めなければなりません。
しかし、一度キャリアが中断してしまうと、以前と同様の条件で働ける場所を見つけるのは非常に困難です。特に、子どもが幼いうちは時短勤務を検討する必要がある場合もあり、十分な収入を得ることができず離婚貧乏に陥ってしまうかもしれません。
③ 養育費の支払い
女性側が親権を獲得すると、離婚後は、男性側から養育費を支払ってもらうことができます。
しかし、離婚後に養育費の支払いが滞るケースもあり、本来もらえるはずの養育費が受け取れず、貧乏生活に陥ることもあります。養育費の未払いが生じたときは、配偶者との話し合いや調停・裁判などの手続きを利用して、しっかりと相手に請求していくようにしましょう。
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3、離婚貧乏を避けるための6つのポイント
離婚貧乏に陥る主な原因のひとつに、離婚条件を十分に確認できていなかったことがあります。そのほかにも、離婚貧乏にならないためのポイントを押さえておきましょう。
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(1)離婚後の生活をきちんとシミュレーションする
配偶者へ離婚を切り出す前に、まずは離婚後の生活をきちんとシミュレーションしておきましょう。
- 離婚後の収入に変化があるか、離婚前よりどのくらい減るか
- 引っ越しや、家具・家電の購入にどのくらいの費用がかかるか
- 離婚後の生活費に変化があるか、折半していた生活費は全額払う必要が出てくるか
- 子どもがいる場合、養育費でどのくらいもらえるか(支払うか)
これらの事項についてなるべく細かく確認することで、離婚後の収支が明確になります。支出が上回るようであれば、その分を補える仕事を探しましょう。就職活動には時間を要するため、早めに生活費のシミュレーションをしてみてください。
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(2)慰謝料は適正額なのかを確認する
不倫やDV、モラハラをしてしまった場合、慰謝料を支払う必要がありますが、相手の請求にそのまま応じる必要はありません。慰謝料の金額には、一定の相場があります。そのため、相手から慰謝料を請求されたときは、提示された金額が適正かどうか確認するようにしましょう。
また、慰謝料は一括で支払うことが一般的ですが、難しい場合は、相手との交渉により分割払いにしてもらうことも検討しましょう。 -
(3)養育費や財産分与などの離婚条件は妥協せずにしっかりと取り決めておく
離婚時には、慰謝料以外にも養育費、婚姻費用、財産分与などの離婚条件を取り決める必要があります。焦って離婚しようとすると、不利な条件で合意してしまうリスクがあるため、離婚条件は妥協せず、じっくりと話し合って決めていくようにしましょう。
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(4)離婚条件を書面に残す
離婚条件について合意できたら、離婚協議書を作成し、離婚条件を書面に残しておくことが大切です。
なぜなら、口頭での合意だけで終わらせてしまうと、離婚後に合意内容をめぐってトラブルが生じるおそれがあるからです。たとえば、相手が養育費などの支払いを怠った際、書面に合意条件が残っていなければ、支払いについての条件を証明することができないからです。
なお、養育費の滞納を防ぐためには、離婚協議書を公正証書にしておくのがおすすめです。公正証書にすれば、相手が養育費の支払いを怠ったとしても、すぐに強制執行の申立てができ、相手の預貯金や給料から強制的に未払いの養育費を回収することができます。 -
(5)受け取れる手当などを把握しておく
離婚をして子どもと一緒に生活する方は、行政からのさまざまな経済的支援制度を利用することができます。ひとり親家庭が利用できる経済的支援制度の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 児童手当
- 児童扶養手当
- 児童育成手当
- ひとり親家庭住宅手当
- ひとり親家族等医療費助成制度
- 特別児童扶養手当
- 障害児福祉手当
利用できる経済的支援制度は、お住まいの自治体によって異なるため、まずは自治体の担当窓口を訪ねて、離婚後に利用できる制度を確認してみるとよいでしょう。
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(6)弁護士などの専門家に相談する
離婚貧乏を回避するには、弁護士などの専門家に相談するのが有効な対策です。
適正な条件で離婚するには、離婚問題に関する知識や経験が欠かせません。専門家である弁護士に相談すれば、少しでも有利な条件で離婚できるよう、アドバイスやサポートを受けることが可能です。
4、離婚貧乏で悩む前に弁護士に相談すべき理由
経済的な不安から離婚に踏み切ることができない方は、一度弁護士に相談してみましょう。
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(1)離婚条件の取り決めについてアドバイスを受けられる
離婚時には、慰謝料、養育費、財産分与などさまざまな離婚条件の取り決めが必要になります。離婚条件には、時効という期間制限があるため、離婚後に取り決めをしていないことに気付いたとしても、時間が経過しすぎていると財産分与や慰謝料を請求できないリスクがあります。
弁護士に相談をすれば、具体的な状況を踏まえて、決めるべき離婚条件や決め方、金額の相場などをアドバイス可能です。アドバイスを受けることで、離婚後の生活にかかる費用もわかりやすくなり、離婚貧乏を回避することができるでしょう。 -
(2)相手との交渉を任せられて不利な条件で離婚しないようにできる
弁護士に依頼すれば、相手との交渉を任せることができます。自分で交渉をする必要がなくなるため精神的負担は大幅に軽減できるでしょう。また、専門家である弁護士が交渉するため、不利な条件で離婚するのを回避することができます。
相手との話し合いがまとまったときは、離婚協議書や公正証書の作成についてもサポート可能なので、将来のトラブルを防ぐことができるというメリットもあります。 -
(3)子どもがいる場合は親権や面会交流権などの問題も解決できる
夫婦に子どもがいる場合、親権や面会交流などでトラブルが生じるケースも少なくありません。
離婚問題に詳しい弁護士であれば、子どもの親権や面会交流の問題を解決するためのポイントを熟知しています。面会交流を充実する代わりに親権を譲るよう交渉するなど、さまざまな手法で相手を説得することが可能です。
離婚問題をスムーズに解決するには弁護士のサポートが欠かせません。まずは弁護士に相談するようにしましょう。
5、まとめ
離婚貧乏とは、離婚によって経済的な困難に陥る状態を指し、男女によって異なる要因が影響します。離婚貧乏を避けるためには、離婚条件をきちんと話し合うこと、適切な請求費用なのかを確認することなどが大切です。弁護士に相談すれば、現状に合った離婚条件や請求費用をアドバイスできるため、有利な条件で離婚できる可能性が高くなるでしょう。
離婚貧乏が不安で離婚に踏み切れないという方は、ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスまでお気軽にご相談ください。
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