離婚の際に子どもの親として考えるべきこと|親権・養育費・苗字
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離婚は、夫婦の問題だけでなく子どもの人生にも大きな影響を与える問題です。
離婚によって生活環境や経済状況が大きく変化することは、子どもにも少なからず精神的ストレスを与えることになります。そのため、離婚をする際には、子どもへの影響に配慮して、子どものためにどのような選択がベストであるかをよく考えることが大切です。
本コラムでは、離婚の際に親として考えるべき事柄について、ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスの弁護士が解説します。
1、離婚するときは親権を決めなければならない
夫婦に子どもがいる場合には、離婚するときに親権を決める必要があります。
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(1)親権とは
親権とは、未成年の子どもを監護養育し、子どもに代わって財産の管理や法律行為の代理を行う権利または義務のことをいいます。
子どもの親権は、夫婦が共同して行使することになりますが、離婚の際にはどちらか一方が親権を行使することになります。
親権には、主に以下の二つの内容が含まれています。
① 財産管理権
財産管理権とは、親権者が子どもの財産を管理し、子どものした法律行為に同意または子どもに代わって法律行為をする権利のことをいいます。
たとえば、子どもの携帯電話の契約に同意することや子どもの預貯金を管理することは、親権者による財産管理権の行使として行われます。
② 身上監護権
身上監護権とは、親権者が子どもの監護養育を行う権利をいいます。身上監護権には、以下の3つの内容が含まれます。- 監護教育権
- 居所指定権
- 職業許可権
親権者が子どもと一緒に生活することになるのは、親権に含まれる身上監護権が理由です。親権と監護権を分離して、親権者とは別に監護権者を指定することもできますが、あまり一般的な方法とはいえません。
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(2)未成年の子どもがいる場合には必ず親権者を決める必要がある
夫婦が離婚をする際には、離婚届に必要事項を記入し、市区町村役場に離婚届を提出する必要があります。
夫婦に子どもがいる場合には、離婚届の「未成年の子の氏名」欄に父と母のどちらが親権者になるかを記入しなければなりません。
離婚届に親権者の記載がない場合には離婚届は受理されないため、未成年の子どもがいる場合には、必ず親権者を決めなければいけないのです。
2、離婚した後の養育費はどうなるの?
以下では、養育費の概要や、金額などに関する決め方を解説します。
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(1)養育費とは
養育費とは、子どもの教育や監護のために必要となる費用のことをいいます。
具体的には、以下のような子どもに関する費用が、養育費に含まれます。- 生活費
- 教育費
- 医療費
- 娯楽費
- 交通費
子どもの親権を得て子どもと一緒に生活する親(監護親)は、子どもと離れて暮らす方の親(非監護親)に対して、毎月一定額の養育費を請求することができます。
いつまで養育費を支払うのかについては夫婦の話し合いによって決めることになりますが、子どもが成人に達するまで、または大学を卒業するまでなど、家庭の事情によってさまざまな場合が存在します。 -
(2)養育費の決め方
子どもの養育費については、以下のような方法で決めることになります。
① 夫婦の話し合い
養育費に関する取り決めは、まずは夫婦の話し合いによって決めていきます。
お互いに合意が成立すれば相場を無視した金額でも問題ありませんが、一般的には、裁判所が公表している養育費算定表を利用して養育費の金額を話し合うことになります。
夫婦の話し合いで合意に至った場合には、離婚協議書を作成して、養育費に関する事項も協議書に盛り込みましょう。
また、将来に相手が養育費を滞納した場合に確実に取り立てられるようにするため、離婚協議書は公正証書にしておくことをおすすめします。
② 養育費請求調停
夫婦の話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所に養育費請求調停の申立てを行います。
調停では、夫婦双方から収入に関する資料(給与明細、源泉徴収票など)の提出を行い、養育費算定表に基づく養育費の相場で話し合うことが基本になります。
相場を超える養育費の支払いを求めるのであれば、その要求を正当化できるような事情を主張しなければなりません。
③ 審判
調停でも合意に至らない場合には、調停は不成立となり、自動的に審判に移行します。
審判では、裁判官が一切の事情を考慮したうえで、適正な養育費の金額を決定します。
3、離婚にあたって子どもの苗字はどうすればよいのか?
以下では、離婚によって子どもの苗字がどうなるのかについて解説します。
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(1)子どもの苗字と親権は無関係
離婚によって、子どもの親権者が旧姓に戻ることがあります。しかし、子どもの苗字は、親の離婚や誰が親権者になるかによって影響を受けることはありませんので、親権者が旧姓に戻ったとしても、それだけでは子どもの苗字が変わることはありません。
子どもの苗字と親権者の苗字が異なっていたとしても、法的に問題が生じることはありませんが、生活上の不便や子どもへの心理的影響が生じる可能性があります。
そのため、離婚に伴い子どもの苗字も変えたいという場合には、後述するような氏の変更手続きが必要になります。 -
(2)離婚後の子どもの苗字を変えるための手続き
離婚後に子どもの苗字を変える場合には、以下のような手続きが必要になります。
① 裁判所に子の氏の変更許可の申立て
子どもの苗字を変えるためには、まずは、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に「子の氏の変更許可の申立て」を行います。
この申立てを行うのは基本的には子ども本人ですが、子どもが15歳未満であれば、法定代理人である親権者が代理して行うことができます。
氏の変更にあたっては裁判所の許可が必要になりますが、特に問題なく許可が下りるケースがほとんどです。
② 市区町村役場に入籍届の提出
裁判所の許可により自動的に子どもの苗字が変更されるわけではありません。
子どもの苗字を変更するためには、裁判所から届いた審判書謄本と入籍届を市区町村役場に提出する必要があります。
4、離婚した後に親として子どもと面会できるのか?
離婚後、子どもと別々に生活する親は、面会交流という方法によって子どもと面会をすることができます。
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(1)面会交流とは
面会交流とは、子どもと離れて暮らしている親が定期的・継続的に子どもと会ったり、電話や手紙などの方法で交流したりすることをいいます。
離婚後、子どもに会いたい場合には、監護親に対して面会交流を求めることにより子どもとの面会を実現できる可能性があります。 -
(2)面会交流で決めるべき内容
面会交流の際に取り決めるべき内容としては、以下の内容があります。
- 面会交流の頻度
- 面会交流の時間
- 面会交流の場所
- 連絡方法
- 子どもの受け渡し場所、方法
- 宿泊を伴う面会の可否
- 学校行事への参加の可否
- プレゼントの可否
面会交流の内容は、つい親の都合のみで決めてしまいがちですが、本来なら、面会交流では子どもの利益を最優先にすることが求められます(民法766条)。
「子どもにとって何が大事か」を常に考えながら、面会交流の内容を決めていきましょう。 -
(3)面会交流の決め方
面会交流は、以下のような方法で決めていきます。
① 夫婦の協議
離婚後の面会交流については、離婚時の夫婦の話し合いによって決めるのが一般的です。
離婚後にも面会交流の取り決めをすることはできますが、離婚後では連絡を取り合うのも難しい場合もありますので、出来るかぎり離婚時に決めておくべきといえます。
面会交流の内容について夫婦の合意が成立した場合には、離婚協議書に面会交流に関する取り決めを記載しておきましょう。
こうすることで将来、面会交流に関するトラブルが生じるのを防ぐことができます。
② 面会交流調停
夫婦の話し合いでは合意に至らない場合には、家庭裁判所に面会交流調停の申立てを行います。
調停では、どのような面会交流の方法が適切であるかを調査するために、家庭裁判所の調査官が介入することもあります。
また、継続的な面会交流が問題なく行うことができるかをチェックするために、家庭裁判所において試行的面会交流が実施されることもあります。
③ 面会交流審判
調停でも合意に至らない場合には、調停は不成立となり、自動的に審判に移行します。審判では、裁判官が一切の事情を考慮して、適切な面会交流の方法を決定します。
5、まとめ
離婚時には、どちらの親が親権者になるのかを決めなければなりません。
親権者をどちらにするかは夫婦の話し合いによって決めることになりますが、話し合いがまとまらない場合には、調停や審判にまで発展することがあります。
離婚後の子どもの養育費や親権などの手続きについて詳しく知りたいという方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています