離婚協議書は公正証書にすべき? メリットやポイントを弁護士が解説
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「離婚協議書は、公正証書にしておいた方がいい」。
離婚を検討し情報収集をしている方であれば、このような意見を聞いたことがあるかもしれません。
公正証書は、基本的に公証役場に行き手数料を支払って作成してもらなければならないものです。そのため公正証書にするとしても、そのメリットを知っておきたいと思う方も少なくないことでしょう。
ちなみに全国には約300か所の公証役場があるとされ、岡崎市ではシビックセンター2階の「岡崎公証人合同役場」で公正証書を作成できます。
本コラムでは、離婚協議書を公正証書とするメリットやポイントを、ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスの弁護士が解説していきます。


1、離婚協議書と公正証書
まず、離婚協議書と公正証書の違いについて、ご説明していきます。
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(1)離婚協議書
離婚協議書とは、離婚の際の条件などについての合意を書面にしたものです。離婚自体は、当事者が合意できれば、離婚届を提出することで成立します。
しかし離婚の際には、通常「夫婦が築いてきた財産をどのように分けるか」「子どもの養育費はどうするか」といった取り決めも必要になります。
この取り決めは、口頭でも有効とされます。
しかし、後日、取り決めの有無や内容でトラブルにならないように、「離婚協議書」が作成するのが一般的です。 -
(2)公正証書
公正証書とは、公証人が法律にもとづいて作成する公文書です。「遺言」や「任意後見契約」、「金銭消費貸借契約」などの場面でも利用されています。公正証書で契約書類などを作成すると、裁判所の判決と同じ効力を持ち、相手の財産の差し押さえを行うことなどが可能です。詳しくは、2章で説明します。
「離婚」の場面では、当事者の要望や必要性に応じて、離婚の合意や養育費、面会交流、強制執行を認諾するかといった事柄を決め、公正証書が作成します。
公正証書を作る場合には、基本的に当事者双方が公証役場に行き、所定の手数料をおさめ、手続きを進める必要があります。
2、離婚協議書を公正証書にするメリット
離婚協議書を公正証書にしておくメリットは、主に次のような点です。
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(1)高い証明力がある
離婚協議書自体は、インターネット上のテンプレートなどを利用して、比較的に簡単に作成することも可能です。
しかし、当事者が個人で作成したものは私文書であり、偽造や改変、紛失というリスクが伴います。
一方、公正証書は公証人が作成する公文書のため、高い証明力があり、裁判でも有効な証拠として取り扱われます。また、作成した公正証書は公証役場で保管されるので、偽造や紛失などのリスクもほぼありません。 -
(2)すぐに強制執行をすることも可能になる
公正証書を作成する際に、「強制執行認諾」の文言を入れておけば、債務者に養育費の不払いなどがあっても、すぐに裁判所の強制執行手続きに入ることができます。
たとえば、夫が妻に養育費を支払う約束をしていたが、支払われなくなったとします。
そういった場合には、債務者である元夫の給与などを差し押さえて、そこから養育費を回収することができます。これは、裁判所の強制執行手続きと呼ばれるものです。
ただし、この強制執行手続きを利用には、強制執行可能であることを証明する文書(債務名義)が必要です。
離婚協議書があったとしても、公正証書でなければ、債務名義としては扱われません。そのため裁判などを起こして、債務名義になる判決を得る必要があります。しかし、裁判で判決が出るまでには、手間や労力や費用もかかります。
また、判決を得て強制執行手続きを始めたとしても、相手に支払うだけの資力がなければ、報われない結果となる可能性もあるでしょう。
一方、公正証書は執行認諾文言を入れていれば、債務名義として扱われます。
そのため裁判を起こさなくても、執行認諾文言付き公正証書を裁判所に提出すれば、直ちに強制執行手続きに入ることが可能です。
これが、離婚協議書を公正証書にしておく最大のメリットといえるでしょう。 -
(3)取り決めの内容を確実に残せる
公正証書は、作成に公証人が関与するため、法律的に無効な内容や不明確な点などは、修正・削除が可能です。したがって、法律的にも有効な内容を確実に残せる、というメリットがあります。
お問い合わせください。
3、離婚協議書を公正証書にするときのポイントとは
では、離婚協議書を公正証書とする時のポイントは何でしょうか。本章で解説します。
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(1)作成した離婚協議書が、そのまま使えるとは限らない
当事者の夫婦が作成した離婚協議書がある場合、そのまま公正証書にできるとは限らないので、注意が必要です。なぜなら、当事者が作成した場合には、条件の記載が明確でなかったり、法律上無効な内容や書式の不備があることも少なくないためです。
離婚協議書に不備などがあれば、当事者で再度話し合い、合意しなければならなくなります。
そのため「最初から公正証書にする」つもりで、夫婦双方が離婚の条件などの話し合いを進めることが大切です。 -
(2)できる限り離婚前に公正証書にしておく
取り決めた条件は、離婚後に公正証書にすることもできます。しかし離婚前と離婚後では、当事者の心境に変化があり、離婚後は支払う側が公正証書にすることに抵抗を覚える可能性も高くなるかもしれません。
たとえば離婚後には、支払う側が再婚したり、子どもにあまり会えず不満を抱えたりして、積極的に払いたがらない、ということも想定できます。
そういった状況で相手を説得して、強制執行も可能になる公正証書を作成することは、非常に難しいでしょう。できる限り、離婚が成立する前に公正証書にしておくことをおすすめします。 -
(3)当事者の一方だけで作成できるわけではない
当事者が作成した離婚協議書があるときには、夫婦の一方だけで手続きをして公正証書にできると思われがちです。
しかし夫婦の一方だけで、手続きを進めて公正証書にできるわけではありません。
公正証書にするためには、基本的に夫婦双方で公証役場に行き、手続きをしなければならないのです。
したがって「離婚協議書が手元にあるから、いつでも公正証書にできる」と思っていると、いざというときに相手の協力が得られず、公正証書を作成できないリスクがあります。
そのようなことのないように、離婚協議書を作成していても、離婚前に公正証書にしておくことが大切です。
4、離婚は弁護士に相談を
離婚の際には、財産分与や養育費、年金分割、親権、面会交流など、さまざまな取り決めをする必要があります。しかし当事者だけで、後悔を残さない内容でスムーズに取り決めることには限界があるでしょう。
そのため離婚の際には、弁護士に相談することもおすすめです。弁護士に相談したときのメリットは、次のような点です。
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(1)相手との交渉を任せられる
弁護士は、ご依頼者の代理人となり、離婚の相手と交渉をすることができます。
ご依頼者にとっては、相手と交渉する負担を軽くできますし、ご自身の主張を法律に基づいた説得力を持って相手に伝えられるでしょう。 -
(2)後悔を残さない協議内容にできる
離婚に関することを、夫婦だけで取り決めた場合、あとから「もっと詳しく決めておけばよかった」と後悔することもあるでしょう。
弁護士に相談すれば、離婚に関して豊富な知識と経験があるため、ご依頼者にとって必要な条件や対策などのアドバイスを得て、より自分の希望に沿った離婚協議書を作れる可能性が高くなることでしょう。 -
(3)トラブルを予防し、適切に対処できる
弁護士に依頼したときには、トラブルを予防するために協議書にどのような項目を入れたらよいかといったアドバイスを受けられます。
また、もしトラブルが生じたときでも、弁護士は法的手段も含めて適切に対処できますので、より安心感があるいうメリットもあります。
5、まとめ
本コラムでは、離婚協議書を公正証書とするメリットやポイントを解説していきました。
離婚の条件は、はじめから離婚前に公正証書を作るつもりで、話し合いましょう。また、離婚協議書を作成したからといって安心してしまうと、養育費や慰謝料など不払いに対処できないというリスクがあります。
ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスの弁護士は、ご相談者にとって後悔の少ない離婚にできるよう全力でサポートします。
おひとりで悩むことなく、ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています