性行為を盗撮しただけでも犯罪になる? 該当する犯罪や逮捕後の流れ
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令和7年1月7日、愛知県岡崎市の商業施設内のトイレで、個室にいた男児(11歳)をスマートフォンで撮影しようとしたとして、安城市内の中学校の非常勤職員の男性(22歳)が性的姿態撮影等処罰法違反未遂の罪で逮捕されました。
最近では、スマートフォンのマッチングアプリなどを利用して、気軽に異性と出会えるようになりました。アプリで出会った女性と意気投合して性行為に及ぶ場面もあるかもしれませんが、性行為を盗撮するのは犯罪ですので注意が必要です。相手の年齢によっては同意があったとしても罪に問われる可能性があります。
今回は、性行為を盗撮した場合に成立する犯罪と盗撮で逮捕された場合の流れなどについて、ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスの弁護士が解説します。


1、無断で性行為を盗撮すると犯罪になる
無断で性行為を撮影するのは犯罪です。以下では、性行為の撮影により成立し得る犯罪について説明します。
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(1)撮影罪
撮影罪とは、正式名称を「性的姿態等撮影罪」といい、令和5年7月13日に施行された性的姿態撮影等処罰法により定められている犯罪です。
撮影罪は、正当な理由なくひそかに性的姿態等を撮影した場合に成立する犯罪で、性的姿態には以下のようなものが該当します。- 性器、肛門、臀部、胸部などの人の性的な部位
- 性的な部分を隠すために着用している下着
- わいせつな行為または性交等がされている姿態
無断で性行為を盗撮する行為は、性的姿態をひそかに撮影する場合に該当しますので、撮影罪に問われる可能性があります。
なお、撮影罪が成立すると3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科されます。 -
(2)迷惑防止条例違反
各都道府県では、公衆に著しく迷惑をかける行為を防止して、生活の平穏を保つことを目的として、迷惑防止条例を定めています。
具体的な規定の仕方は都道府県によって異なりますが、ほとんどの都道府県で盗撮を処罰対象に含めています。たとえば、愛知県の迷惑防止条例では、以下のような場所での下着や身体の撮影、撮影機器の差し向け・設置などの行為を禁止しています。- 公共の場所または公共の乗り物
- 学校、事務所、タクシーその他不特定または多数の人が利用し、出入りする場所または乗り物
- 住居、浴場、便所、更衣室その他衣服の全部または一部を着けない状態でいる場所
そのため、自宅やホテルなどでの性行為を盗撮すると迷惑防止条例違反となる可能性があります。罰則の内容も都道府県によって異なりますが、愛知県では、盗撮行為で迷惑防止条例違反となった場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。
ただし、性的姿態撮影等処罰法施行後は、盗撮行為は同法におり処罰されますので、迷惑防止条例が適用されるのは、性的姿態撮影等処罰法施行前の令和5年7月13日よりも前の盗撮事件になります。 -
(3)軽犯罪法
軽犯罪法では、正当な理由なく住居、浴場、更衣場、便所その他衣服を着けないでいるような場所をひそかにのぞき見る行為を禁止しています。
ひそかにのぞき見る行為には、一般的なのぞき行為だけでなく、盗撮行為も含まれると解釈されていますので、自宅やホテルで性行為の盗撮をすると軽犯罪法に該当する可能性があります。
性行為の盗撮が軽犯罪法違反となった場合、拘留または科料に処せられます。 -
(4)児童ポルノ禁止法違反
児童ポルノ禁止法では、ひそかに児童ポルノに該当するような児童の姿態を撮影することで、児童ポルノを製造する行為を禁止しています。
児童ポルノとは、18歳未満の児童のわいせつな写真や動画などをいいます。
性行為を盗撮した対象が18歳未満の児童であった場合には、児童ポルノ禁止法違反となりますので、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます。
2、性行為の撮影に同意があった場合は?
盗撮ではなく性行為の撮影に相手の同意があった場合でも犯罪は成立するのでしょうか。
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(1)原則として撮影に同意がある場合には犯罪は成立しない
相手の同意を得た上で性行為の様子を撮影した場合、性的姿態等を「ひそかに」撮影したとはいえませんので、撮影罪は成立しません。
また、その他の犯罪も基本的には相手の同意なく撮影する行為を処罰対象にしていますので、原則として性行為の撮影に相手の同意がある場合には、犯罪は成立しません。
ただし、性行為の撮影をした相手が18歳未満の未成年者であった場合、児童ポルノ禁止法違反の罪に問われる可能性があります。また、未成年者との性行為は、青少年健全育成条例違反や児童買春として処罰される可能性があります。これらの犯罪は、未成年者の同意があったとしても成立しますので注意が必要です。 -
(2)動画を流出させた場合には別の罪に問われるリスクがある
相手の同意を得た上で性行為の撮影をすれば、原則として犯罪にはなりませんが、撮影した動画を流出させてしまった場合には、別の罪に問われるリスクがあります。
具体的に問われる可能性のある罪としては、以下のようなものが挙げられます。① 提供罪
相手の同意なく性行為を盗撮し、その動画などをSNSや動画サイトなどにアップロードすると、性的姿態撮影等処罰法で定められている「提供罪(性的撮影記録提供等罪)」に該当します。
特定・少数の人に提供した場合には、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科されますが、不特定または多数の人に提供した場合には、法定刑が重くなり、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり)が課されます。
② リベンジポルノ防止法違反
リベンジポルノ防止法では、撮影対象者の同意なく、個人的な性的画像・動画を無断で不特定または多数の人に公開する行為を禁止しています。
相手の同意なく性行為を盗撮し、第三者が対象者を特定できるような方法で不特定または多数の人に公表すると、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。また、性行為の盗撮画像や動画を公表させる目的で第三者に提供すると、1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
③ わいせつ物頒布等罪
盗撮した性行為の動画や画像を不特定または多数の人に交付したり、不特定または多数の人が認識できる状態に置くと、わいせつ物頒布等罪が成立し、2年以下の懲役または250万円以下の罰金もしくは科料またはその両方が科されます。
わいせつ物頒布等罪は、提供罪やリベンジポルノ防止法とは異なり、撮影対象者の同意がある場合でも罪に問われる点に注意が必要です。
④ 名誉棄損罪
盗撮した性行為の動画を不特定または多数の人に見せることで、その人の社会的評価を低下させた場合には、名誉毀損罪が成立します。
名誉毀損罪が成立すると3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金が科されます。
3、盗撮で逮捕|刑事手続きの流れ
性行為の盗撮をしたことで逮捕されてしまった場合、以下のような流れで刑事手続きが進んでいきます。以下では刑事手続きの流れについて解説します。
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(1)逮捕
逮捕されると被疑者(=犯罪の疑いをかけられ、捜査の対象となっている方)の身柄は警察署内の留置施設で拘束されます。
また、逮捕中は、警察による取り調べを受け、その内容が供述調書にまとめられます。供述調書の内容は、裁判の証拠になりますので、不利な調書がとられないようしっかりと内容を確認してから署名するようにしましょう。
逮捕には時間制限がありますので、警察は、逮捕から48時間以内に被疑者の身柄を検察に送致しなければなりません。
被疑者の身柄の送致を受けた検察官は、必要な取り調べを実施した上で、勾留請求をするかどうかの判断を行います。引き続き身柄拘束に必要があると判断した場合、検察官は、送致から24時間以内に、裁判官に勾留請求を行います -
(2)勾留
裁判官は、被疑者に対する勾留質問を実施し、勾留を許可するかどうかの判断を行います。
勾留が許可されると原則として10日間の身柄拘束が行われます。
また、検察官が勾留延長請求を行い、それも認められるとさらに最大10日間の身柄拘束が行われます。
そのため、逮捕から合計すると最長で23日間にも及ぶ身柄拘束期間となります。 -
(3)起訴・不起訴
検察官は、勾留期間が満了するまでの間に、起訴または不起訴の判断を行います。
不起訴処分になればその時点で釈放となり前科が付くこともありません。
他方、起訴されてしまうと、刑事裁判が行われ、有罪・無罪の審理が行われます。 -
(4)刑事裁判
日本の刑事司法では、検察官により起訴された事件は非常に高い確率で有罪になりますので、執行猶予付き判決の獲得を目指した情状弁護が中心となります。
有罪判決が言い渡されたとしても、執行猶予が付けば直ちに刑務所に収容されることはありませんので、裁判では有利な情状を主張立証し、執行猶予付き判決の獲得を目指していきます。
4、盗撮事件で逮捕されたら|弁護士に相談すべき3つの理由
盗撮事件で逮捕されてしまったときは、以下の理由からすぐに弁護士相談することをおすすめします。
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(1)盗撮の被害者と示談交渉してもらえる
盗撮事件は、被害者の方と示談を成立させることができれば、逮捕や起訴を回避できる可能性が高くなります。
しかし、被害者の方は、相手に対して強い処罰感情を有していますので、当事者同士で直接やり取りをするのは困難なケースも少なくありません。
弁護士に依頼をすれば、弁護士があなたの代理人として被害者と示談交渉を行うことができます。被害者の方としても、弁護士が窓口になってくれた方が安心して交渉に臨めますので、スムーズに示談交渉を進めることが期待できます。 -
(2)逮捕や起訴を回避するための対処を行ってもらえる
被害者の方との示談以外にも盗撮事件で逮捕や起訴を回避する方法には、以下のようなものがあります。
- 被害者の方と示談ができないときは贖罪寄付を検討する
- 性依存の傾向があるなら専門のクリニックへの通院
- 逮捕されている場合は勾留阻止に向けた活動
- 勾留されている場合は準抗告や勾留取消請求
刑事事件に詳しい弁護士であれば、事案に応じた最適な弁護活動により、逮捕や起訴の回避に向けてサポートすることが可能です。
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(3)起訴されても裁判で刑事弁護を行ってもらえる
盗撮事件で起訴されてしまった場合は、執行猶予の獲得に向けて活動していくことになります。執行猶予が付くかどうかによって、被告人(=犯罪の疑いをかけられ、検察官に起訴された方)のその後の人生は大きく変わってきますので、非常に重要なポイントといえるでしょう。
弁護士に依頼をすれば、起訴後も執行猶予付き判決の獲得に向けてサポートしてもらうことができます。
被害者の方との示談、監督者の存在など有利な事情を主張立証することで、執行猶予付き判決の可能性を高めることが可能です。
5、まとめ
令和5年7月13日に性的姿態撮影等処罰法が施行されたことにより、無断で性行為を盗撮する行為は、撮影罪で処罰されます。従来は都道府県が制定する迷惑防止条例により処罰されていましたが、施行日以降は、より法定刑の重い撮影罪が適用されることになります。
性行為を盗撮する行為は犯罪ですので、このような行為を犯してしまったときはなるべく早く弁護士に相談することが大切です。
性行為の盗撮事件を起こしてしまった方は、ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスまでご相談ください。
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