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吸収合併で解雇された! 突然のリストラは違法ではないのか

2021年11月30日
  • 不当解雇・退職勧奨
  • 投げ銭
  • 法律
吸収合併で解雇された! 突然のリストラは違法ではないのか

厚生労働省愛知労働局が公表している「令和2年度個別労働紛争解決制度等の施行状況」によると、民事上の個別労働紛争に係る相談件数は1万6136件でした。相談内容の内訳としては、いじめ・嫌がらせに関するものがトップであり、次いで労働条件の引き下げ、解雇退職勧奨、自己都合退職、雇い止めに関する相談が上位を占めています。

吸収合併が行われた場合には、吸収会社の労働者は、存続会社に移ることになりますが、当然余剰人員が生じることになります。そのため、存続会社では、余剰人員を整理するために解雇やリストラなどの方法をとることがありますが、吸収合併を理由に解雇をすることは可能なのでしょうか。また、引き続き存続会社で働くことになった場合には、吸収会社との間の労働契約の内容には変化が生じるのでしょうか。

今回は、吸収合併に伴う解雇や労働条件の変更に関する問題について、ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスの弁護士が解説します。

1、吸収合併によるリストラ・解雇は起こり得るのか

吸収合併を理由としてリストラや解雇をすることは可能なのでしょうか。以下では、吸収合併に関する基本的な知識と解雇・リストラとの関係について説明します。

  1. (1)吸収合併とは

    吸収合併とは、組織再編として行われる手段のひとつであり、一方の法人を消滅させ、他方の法人に消滅する会社の権利義務のすべてを承継させる方法のことをいいます。

    合併によって、消滅会社のすべての権利義務が存続会社に包括的に承継されることになりますので、消滅会社のすべての労働者の労働契約上の地位が存続会社に包括的に承継されることになります

    したがって、吸収合併によって消滅会社で働いていた労働者は、会社の消滅とともに仕事を失うというわけではなく、存続会社の労働者として働くことになります。労働契約の承継は、当然に行われるものですので、個別の労働者との合意は不要です

  2. (2)存続会社におけるリストラ・解雇の可能性

    上記のとおり、吸収合併によって会社が消滅したとしても、消滅会社の労働者の契約上の地位は存続会社に引き継がれることになりますので、吸収合併を理由として直ちに解雇・リストラされるということはありません。

    しかし、存続会社では、吸収会社の労働者をそのまま受け入れることになるため、割り当て可能なポストとの関係で人員に余剰が生じる可能性が高いといえます。そこで、存続会社において、余剰人員を対象として解雇やリストラが検討されることがありますが、吸収合併だけを理由にして、労働者を解雇・リストラするということは原則として認められていません

    存続会社において人員整理の必要性がある場合には、以下に述べるような方法で人員整理を進めていくことになります。

2、余剰人員の場合、整理解雇をされる可能性はあるのか

吸収合併によって存続会社に余剰人員が生じた場合には、配置転換、希望退職、退職勧奨などが行われたうえで、最終的に整理解雇が検討されることになります

  1. (1)配置転換

    配置転換とは、同一企業・組織内で、職務内容、職種、就業場所(勤務地)などを変更することをいいます。吸収合併においては、存続会社において割り当てるべき職種やポストがないという場合には、担当業務を割り振ることができる部門に労働者を配置転換することによって、雇用を維持することができます。

    配置転換は、就業規則に使用者が配置転換を命じることができると規定されていれば、それを根拠として行うことができるため、組織再編においては、よく利用される手段です。ただし、以下のような場合には、労働者に対して配置転換を命じることができません。

    • 職種や勤務地を限定する合意がある場合
    • 配置転換によって労働者の給料が大きく減少する場合
    • 労働者の生活上の不利益が特に大きい場合
    • 労働者を退職させるなどの不当な動機・目的がある場合
  2. (2)希望退職制度

    希望退職制度とは、退職金の上乗せなどの優遇条件を提示したうえで、希望退職者を募集して、労働者との合意に基づき労働契約を終了させる方法です

    希望退職者制度を実施することによって、会社には、余剰人員が生じた場合に人員を有効に削減することができるというメリットがありますが、優遇条件によっては、重要なポストに就いている労働者が辞めてしまうというリスクもあります。そこで、希望退職制度においては、最終的には会社の承認が必要となる旨定めておくことが一般的です。

    そのため、労働者側から希望退職制度の申し込みをしたとしても、常に優遇条件で退職が認められるというわけではありません。

  3. (3)退職勧奨

    退職勧奨とは、会社が労働者に対して退職をすすめる行為をいいます。

    解雇は、使用者側からの一方的な意思表示によって労働者との労働契約を終了させるものであるのに対して、退職勧奨は、それ自体では、労働契約を終了させる効力はありません。退職勧奨を受けて、退職をするかどうかは労働者の自由な意思に委ねられているのです。そのため、会社から退職勧奨を受けたとしても労働者には退職をする義務はありません

    労働者が退職を拒否しているにもかかわらず、長時間にわたり執拗に退職勧奨を繰り返したような場合には、労働者が退職に応じたとしてもその効果が否定される可能性があります。また、悪質な退職勧奨に対しては、損害賠償請求も可能です。

  4. (4)整理解雇

    以上のような人員整理の方法をとってもなお余剰人員が生じている場合には、整理解雇が選択されることがあります。

    整理解雇とは、経営状態の悪化などを理由として、労働者との労働契約を終了させるものをいいます。通常の解雇が労働者側の何らかの落ち度を理由になされるものであるのに対して、整理解雇は会社側の事情によって解雇がなされるという違いがあります。

    このように労働者に落ち度がない状況でなされる解雇であることから、その有効性は通常の解雇よりも厳格に判断されることになり、単に、吸収合併によって余剰人員が生じているという理由だけでは、整理解雇を行うことができません

    整理解雇を有効に行うためには、以下のような要素を総合して有効性が判断されることになります。

    1. ① 人員削減の必要性
      存続会社において余剰人員を抱える余裕がないほどの赤字であることや、部門閉鎖などによって余剰人員が生じたなど事情が必要になります。
    2. ② 解雇回避努力
      配置転換、希望退職制度の実施、退職勧奨など解雇以外の人員整理の方法を行い、可能な限り解雇を回避するための努力をしたことが必要になります。
    3. ③ 人選の合理性
      整理解雇の対象となる人員を選定する場合には、合理的かつ客観的な選定基準を設けていることが必要になります。
    4. ④ 手続きの妥当性
      労働組合や労働者との間で整理解雇の方針や条件などについて十分な協議を行ったことが必要になります。

3、勤務形態や労働条件、就業規則などの変更はあり得る

吸収合併によって、消滅会社の労働者の労働契約はどのように変更されるのでしょうか。

  1. (1)吸収合併後も個々の労働条件はそのまま維持される

    吸収合併がなされたとしても、労働者の労働条件が自動的に存続会社の労働条件に統一されるわけではありません。原則として、消滅会社の労働者は、消滅会社との間の労働契約が維持されることになります。

    しかし、消滅会社の労働者は消滅会社との間の労働契約、存続会社の労働者は存続会社との間の労働契約としたままだと、複数の制度が併存することになり、人事管理上さまざまな不都合が生じる可能性があります。

    そのため、吸収合併をする場合には、消滅会社または存続会社のいずれかの会社の労働条件に統一する方法がとられることが一般的です。

  2. (2)労働条件の統一の方法

    存続会社において労働者の労働条件の統一を行う場合には、以下のような方法がとられます。

    ① 労働者との個別合意
    労働条件を統一する場合には、個別の労働者との間で合意を得ることによって、労働条件の変更が可能です(労働契約法8条)。

    ② 就業規則の変更
    労働者の数が多く、個別の合意を得ることが難しいという場合には、就業規則を変更することによって、労働条件の統一をすることも可能です。ただし、就業規則の変更によって、労働者に不利な内容に変更がなされる場合には、以下のような事情を考慮して、変更の有効性が判断されます(労働契約法9条、10条)。

    • 労働者の受ける不利益の程度
    • 労働条件の変更の必要性
    • 変更後の就業規則の内容の相当性
    • 労働組合等との交渉の状況
    • その他の就業規則の変更にかかる事情


    ③ 労働協約の変更
    労働組合との間で労働協約を締結している場合には、労働協約を変更することによって労働条件を統一することも可能です。

    ただし、労働協約の変更による方法では、原則として、組合員のみにその効力が及ぶことになります。

4、退職金の扱いに注意が必要

吸収合併を受けて退職を考えるときだけでなく、存続会社において継続勤務するときにも退職金の扱いについては注意が必要です。

  1. (1)合併直後であれば満額が支給される

    吸収合併では、消滅会社の権利義務が存続会社にそのまま承継されることになりますので、いったんは、消滅会社の労働条件もそのまま引き継がれることになります。

    労働条件の統一を行う場合には、経過措置として一定の期間を設けたうえで、順次労働条件の変更が行われていくことになりますので、合併直後に退職する場合には、従前の雇用契約内容にしたがって満額の退職金を受け取ることができることが多いでしょう

  2. (2)合併によって勤続年数も引き継がれる

    吸収合併によって消滅会社の権利義務や契約内容がそのまま包括的に承継されますので、消滅会社での勤続年数についても、そのまま存続会社に引き継がれることになります。

    そのため、勤続年数の扱いにおいて吸収合併前後において不利益を受けることは少ないでしょう。

  3. (3)合併後の労働条件の統一内容によって退職金が減ることも

    吸収合併後、存続会社においては、人事管理上のさまざまな不都合を解消するために、労働条件の統一が行われることがあります。統一された労働条件の内容が消滅会社の退職金制度に比べて不利な内容になっている場合には、存続会社において勤務を継続することによって退職金が減る可能性もあります

    しかし、労働条件の不利益変更にあたっては、原則として労働者の同意が必要になりますし、例外的に就業規則の変更による場合であっても厳格な要件を満たす必要があります。そのため、このような要件を満たさない労働条件の変更については、適切に争うことによって、無効と判断される可能性もあります。

5、まとめ

吸収合併によって、余剰人員が生じたとしてもそれだけで解雇が認められるわけではありません。また、存続会社で引き続き働くことになった場合でも、労働条件の不利益変更にあたっては、厳格な要件を満たす必要があります。

そのため、吸収合併により解雇された場合や労働条件を不利益に変更されたものの納得がいかないという方は、弁護士に相談をすることによって問題が解決できるかもしれません。

吸収合併による解雇や労働条件の変更についてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 岡崎オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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